アイキルユウ

@わりといい人そうだった。断るのが申し訳ないみたい。中に立つ人は、断ってもかまわないから、二、三度お会いしてみたらというけれど、そのあとでお断りするのは悪いみたい。ほんとにいい人そうなんだけど、なんとなく、ぱっとひらめくものがなくって、お会いするのが億劫というか、面倒というか、これという何かが感じられないの。どんな人とでも、いったん結婚してしばらくたってしまえばそんなものかも知れないけれど、そんなんで結婚してしまっていいのかとも思うし。「気が進まない」って母に言ったら、「長谷川さんのことが、まだ終っていないのかい」って。だから、「終るも何も、始まってもいない」って、答えたら、「同棲までして、始まってないってことがあるかい」だって。あなた、どうおもう?@

 液晶画面のフォントを通じて、佐知子の情感が伝わってくる。
 長谷川が戻ってきた。同時にショスタロカヤが事務室に入ってきた。長谷川の背後に迫る。背後から、ショスタロカヤが覗き込む気配を感じて、一瞬前かがみになって隠そうとした。彼は読めないことに気づいたようで、すぐ姿勢をもとに戻した。
 つぎに、長谷川は今朝着信のメールを開けた。土岐の視線には気づいているはずだ。隠そうとはしない。
土岐は他にすることもない。斜め横から画面の文字を追う。
長谷川は思いついたように、
「コーヒーでものむ?」
と土岐を気遣う。
「サンキュー」
と言うと、長谷川はキッチンに向かう。メール画面が残された。