「それはへんだ。レストランは十時がラストオーダーだ。ラストオーダーから二時間も飲み食いは出来ない。とすると、部屋で四人で飲み続けたのか。しかし、部屋には空のワインボトルもグラスもテイクアウトの食べ物も何もなかった。二人が帰り際に片付けたのか。それにしても、なんで裸だったのか。どんなに熱くてもどんなに酔っていても一人のときは裸で寝たことはない。ということはやはりどちらかと寝たのか。しかし、ふたりは一緒だった。三人で寝たなんていうことがありうるだろうか。それとも単に二人が帰ったあとで熱くなって自ら脱いだのか。あるいは二人がひん剥いて、ワイン片手に男の裸を鑑賞でもしたのか。あまりに酩酊していて、彼女らの要望に応じてしまったということなのか」
「君も思い出せないのか」
「想い出そうとしても、何一つ想い出せない。ただなんとなく、ホテルの部屋の中を夢遊病者のように行ったり来たりしていたような記憶がある。そのまえに、ホテルの階段を泳ぐようにして上ってきたような記憶がとりとめもない夢のようにある。しかし、不思議と部屋での二人の夫人の記憶は微塵もない」
「いずれにしろ、君の毛は誰かに剃られたんだろう」
「いくら酔っていたとしても、自分で剃るとは思えない」
「まあ、そうだろうな」
その後、二日酔いの頭痛を抱えたまま夢の続きを見ているような気分で土岐と長谷川は事務所に出向いた。
車の中で携帯電話と一緒にショルダーバッグを長谷川に返した。
土岐は長谷川に農業試験場での詳細を説明した。
事務所に着く。長谷川は所長に出張の結果が現在のところ不首尾であることを報告した。
「現在のところ、不首尾ってぇのはどう言うこったい?」
と所長が質問してきた。
「授賞式に出席すると言う確約をもらえなかったということです」
「それは不首尾ってぇこったな。それで現在のところってぇのは?」
「出席しないという確約も取らなかったということです」
「どういうこったい?」
「火曜日の昼ごろまでわからないということです」
「ふう~ん、随分と勿体を付けてんだな」
「その場で決断を迫ると出席しないことが確定しそうだったんで」と土岐が補足した。
「何だいそりゃ、出そうで出ないババアの小ン便みてぇだな」
長谷川は明日の午後、事務所の自動車を使用したい旨を伝えた。
「とりあえず、駅まで土岐が出迎えに行きます」
「君も思い出せないのか」
「想い出そうとしても、何一つ想い出せない。ただなんとなく、ホテルの部屋の中を夢遊病者のように行ったり来たりしていたような記憶がある。そのまえに、ホテルの階段を泳ぐようにして上ってきたような記憶がとりとめもない夢のようにある。しかし、不思議と部屋での二人の夫人の記憶は微塵もない」
「いずれにしろ、君の毛は誰かに剃られたんだろう」
「いくら酔っていたとしても、自分で剃るとは思えない」
「まあ、そうだろうな」
その後、二日酔いの頭痛を抱えたまま夢の続きを見ているような気分で土岐と長谷川は事務所に出向いた。
車の中で携帯電話と一緒にショルダーバッグを長谷川に返した。
土岐は長谷川に農業試験場での詳細を説明した。
事務所に着く。長谷川は所長に出張の結果が現在のところ不首尾であることを報告した。
「現在のところ、不首尾ってぇのはどう言うこったい?」
と所長が質問してきた。
「授賞式に出席すると言う確約をもらえなかったということです」
「それは不首尾ってぇこったな。それで現在のところってぇのは?」
「出席しないという確約も取らなかったということです」
「どういうこったい?」
「火曜日の昼ごろまでわからないということです」
「ふう~ん、随分と勿体を付けてんだな」
「その場で決断を迫ると出席しないことが確定しそうだったんで」と土岐が補足した。
「何だいそりゃ、出そうで出ないババアの小ン便みてぇだな」
長谷川は明日の午後、事務所の自動車を使用したい旨を伝えた。
「とりあえず、駅まで土岐が出迎えに行きます」


