「さっき、加藤さんが、ご一緒に食事どうかしらって」
と優子は申し訳なさそうに、残念そうに長谷川に言う。言い終えて、その口調から残念という思いを慶子に気どられたのではないかと心配そうな目線を宙に浮かせた。慶子に対して異様に気を遣っている様子が読みとれた。
土岐には一瞬状況が読めなかった。
(一体、長谷川はなぜ牛田夫人と一緒にいるのか。加藤夫人がなぜ来たのか?)
下手なことを言うと、まずいことになりそうだ。駅前の駐車場へ四人で歩きながら、緊急に思考を巡らせた。
(長谷川が男二人の夕食に牛田夫人を誘うことは考えられない。とすると、牛田夫人が勝手に夕食に参加すると言ったのか。長谷川はそれを断れなかった。そのあと加藤夫人が牛田夫人に電話して、それじゃ一緒に夕食を、ということになったのか?)
土岐はどういう立場で、どういうものの言い方をしなければならないか判断がつかなかった。しばらく三人の様子を覗いながら状況を理解することにした。
車は優子のフランス車だった。慶子が助手席に乗り込んだ。土岐は長谷川と後部座席にもぐりこんだ。
車が走りだす。慶子が二人に提案してきた。
「タンドリチキンでいいかしら?」
と言う。もう決まっているという抑揚があった。
「この四人だと目立つので、土岐さんのホテルでどうかしら?」
と慶子が後ろを見ながら聞いてきた。
「そうですね。あそこなら、邦人もいないし、ローカルホテルだから、政府関係者もいないし、泊まっているのは、地元の行商人みないなのばかりだから、いいかも。安いし」
と長谷川が賛成する。
「それに、あなたたちを送らないで済むし」
と慶子。
優子は終始沈黙を保っていた。運転に集中しているようにも見える。彼女の横顔から感受できる頬のそこはかとない引きつりが何かを訴えかけているような雰囲気を感じた。
優子の運転はお抱え運転手のようにうまくはない。運転にメリハリがない。時々急ブレーキや急発進がある。滑らかな加速とゆるやかなブレーキ操作となだらかなハンドル操作だ。波浪のない湖面を走っているようだとは言えない。高級車の居住性の高さが彼女の運転を補っている。
二十分ほどでホテルに着いた。優子がベルボーイに鍵を預けたのを見届けた。先に三人で一階奥の、レストランにむかった。
優子は後から小走りに駆けて来た。
と優子は申し訳なさそうに、残念そうに長谷川に言う。言い終えて、その口調から残念という思いを慶子に気どられたのではないかと心配そうな目線を宙に浮かせた。慶子に対して異様に気を遣っている様子が読みとれた。
土岐には一瞬状況が読めなかった。
(一体、長谷川はなぜ牛田夫人と一緒にいるのか。加藤夫人がなぜ来たのか?)
下手なことを言うと、まずいことになりそうだ。駅前の駐車場へ四人で歩きながら、緊急に思考を巡らせた。
(長谷川が男二人の夕食に牛田夫人を誘うことは考えられない。とすると、牛田夫人が勝手に夕食に参加すると言ったのか。長谷川はそれを断れなかった。そのあと加藤夫人が牛田夫人に電話して、それじゃ一緒に夕食を、ということになったのか?)
土岐はどういう立場で、どういうものの言い方をしなければならないか判断がつかなかった。しばらく三人の様子を覗いながら状況を理解することにした。
車は優子のフランス車だった。慶子が助手席に乗り込んだ。土岐は長谷川と後部座席にもぐりこんだ。
車が走りだす。慶子が二人に提案してきた。
「タンドリチキンでいいかしら?」
と言う。もう決まっているという抑揚があった。
「この四人だと目立つので、土岐さんのホテルでどうかしら?」
と慶子が後ろを見ながら聞いてきた。
「そうですね。あそこなら、邦人もいないし、ローカルホテルだから、政府関係者もいないし、泊まっているのは、地元の行商人みないなのばかりだから、いいかも。安いし」
と長谷川が賛成する。
「それに、あなたたちを送らないで済むし」
と慶子。
優子は終始沈黙を保っていた。運転に集中しているようにも見える。彼女の横顔から感受できる頬のそこはかとない引きつりが何かを訴えかけているような雰囲気を感じた。
優子の運転はお抱え運転手のようにうまくはない。運転にメリハリがない。時々急ブレーキや急発進がある。滑らかな加速とゆるやかなブレーキ操作となだらかなハンドル操作だ。波浪のない湖面を走っているようだとは言えない。高級車の居住性の高さが彼女の運転を補っている。
二十分ほどでホテルに着いた。優子がベルボーイに鍵を預けたのを見届けた。先に三人で一階奥の、レストランにむかった。
優子は後から小走りに駆けて来た。


