車に身をゆだねた。土岐は派遣員に好意を抱いている自分に気付いた。理由を考えた。彼の風貌を思い起こす。彼の印象を確認した。美男子ではない。朴訥な感じがする。言葉を弄して相手を操ろうとする姿勢が微塵も感じられなかった。話している言葉と心の中が同じものであることがなんの疑念もなく見通せた。そして、頭の形や頭髪がアルベール・カミュを彷彿とさせた。出あうことができたらば、たぶん抱き締めずにはいられないその文学者になんとなく似た雰囲気を派遣員は持っていた。
説明のできない不快な気分が胸中にうずくまる。うら寂しい州都の駅前に降り立った。ハイヤー代は今日の分まで長谷川が払ったはずだ。超過料金を請求された。ハイヤー事務所で運転手の請求するままに料金を支払った。藁半紙に赤いゴム印と手書きの領収書を受け取った。国立銀行で余分に下ろしたはずの紙幣がほとんどなくなっていた。
時刻表によると、次の列車は三十分近くの待ち合わせだった。改札口で茫然と待つ。十分もしないうちに列車が入線してきた。あわてて改札口の駅員に列車の行き先を確認すると、
「間違いない。首都行きの列車だ」
と面倒臭そうに言う。
さらに発車時刻を確認すると、
「前の列車が2時間ほど遅れているだけだ」
とうるさそうだ。
苦笑する。事情を把握した。列車はすでに動き始めていた。あわててデッキに駆け込む。車内に足を踏み入れる。三等車両だった。一等車両は列車最後部にある。進行方向とは逆方向に車内を移動した。二等車両までは通路もかなり混雑していた。一等車両は空席ばかりだった。四人がけのボックスをひとりで専有することができた。
退屈でゆだるような列車の旅が始まった。何も考えず、漫然と車窓を泥濘のように流れる風景を薄目で眺めていた。手付かずのすさんだ自然が埃にまみれている。白く干からびて横たわっていた。点在している畑も手入れが行き届いていない。よく観察していないと、天然自然の一部として見過ごしそうだった。
説明のできない不快な気分が胸中にうずくまる。うら寂しい州都の駅前に降り立った。ハイヤー代は今日の分まで長谷川が払ったはずだ。超過料金を請求された。ハイヤー事務所で運転手の請求するままに料金を支払った。藁半紙に赤いゴム印と手書きの領収書を受け取った。国立銀行で余分に下ろしたはずの紙幣がほとんどなくなっていた。
時刻表によると、次の列車は三十分近くの待ち合わせだった。改札口で茫然と待つ。十分もしないうちに列車が入線してきた。あわてて改札口の駅員に列車の行き先を確認すると、
「間違いない。首都行きの列車だ」
と面倒臭そうに言う。
さらに発車時刻を確認すると、
「前の列車が2時間ほど遅れているだけだ」
とうるさそうだ。
苦笑する。事情を把握した。列車はすでに動き始めていた。あわててデッキに駆け込む。車内に足を踏み入れる。三等車両だった。一等車両は列車最後部にある。進行方向とは逆方向に車内を移動した。二等車両までは通路もかなり混雑していた。一等車両は空席ばかりだった。四人がけのボックスをひとりで専有することができた。
退屈でゆだるような列車の旅が始まった。何も考えず、漫然と車窓を泥濘のように流れる風景を薄目で眺めていた。手付かずのすさんだ自然が埃にまみれている。白く干からびて横たわっていた。点在している畑も手入れが行き届いていない。よく観察していないと、天然自然の一部として見過ごしそうだった。


