それを聞いて場長が喜んだ、善処の意味を誤解していることに気づいた。誤解をこのまま放置していいものかどうか、ずっと黙っている派遣員の表情を見た。気づいた風情はなかった。ただ、
「この国は労働力豊富だから人手を節約するような機械は本質的に不要です。維持費だけでも結構おカネがかかります」
と場長に助言してくれた。場長は耳をまったく傾けていない。終始怪訝そうな顔つきだ。ペリカンのような顎の下の弛みと頬の贅肉を震わせる。しきりに首を左右に振っていた。
農業試験場は一エーカーほどの広さだった。そのうち水田は一平方チェーンほど。細い紐で四分割されている。長線形の葉身と葉鞘の高さや幅の違う稲が植えられていた。
田圃の脇の納屋の周辺に心地よい空気が漂っていた。
派遣員は一区画ごとに品種と使用している肥料の組み合わせの違いを解説してくれた。サチバ種の中粒、長粒、大粒の三品種が中心だと説く。土岐は興味がなかった。聞き流していた。
「種が結構高いんですよ。これも無償援助ですけどね。ここにあるのが三代目で、安い肥料で収穫の多い種を増やすのが目的です。一年目に近郊の農民に配った品種が従来の倍以上の収穫があって、この農業試験場が州の表彰を受けたんです。いまじゃ、この州の米作農家の大半がこの手前の大粒の品種を栽培しています。種をまけばあとは収穫だけというここの農民にいかに稲を育てるのかを指導するのが自分の仕事です」
と親指で鼻先をさし、
「この国は労働力豊富だから人手を節約するような機械は本質的に不要です。維持費だけでも結構おカネがかかります」
と場長に助言してくれた。場長は耳をまったく傾けていない。終始怪訝そうな顔つきだ。ペリカンのような顎の下の弛みと頬の贅肉を震わせる。しきりに首を左右に振っていた。
農業試験場は一エーカーほどの広さだった。そのうち水田は一平方チェーンほど。細い紐で四分割されている。長線形の葉身と葉鞘の高さや幅の違う稲が植えられていた。
田圃の脇の納屋の周辺に心地よい空気が漂っていた。
派遣員は一区画ごとに品種と使用している肥料の組み合わせの違いを解説してくれた。サチバ種の中粒、長粒、大粒の三品種が中心だと説く。土岐は興味がなかった。聞き流していた。
「種が結構高いんですよ。これも無償援助ですけどね。ここにあるのが三代目で、安い肥料で収穫の多い種を増やすのが目的です。一年目に近郊の農民に配った品種が従来の倍以上の収穫があって、この農業試験場が州の表彰を受けたんです。いまじゃ、この州の米作農家の大半がこの手前の大粒の品種を栽培しています。種をまけばあとは収穫だけというここの農民にいかに稲を育てるのかを指導するのが自分の仕事です」
と親指で鼻先をさし、


