と平焼きパンが重ね置かれた大皿を差しむけてきた。
厚さを確認しながら、一枚取った。
「さきほど、中庭から見ました」
と言うと、場長は紅茶に砂糖を入れながら大きくかぶりを振った。
「あそこからみえるのはほんの一部だ。あれだけではない」
と濃い狐色に焼け焦げたガリガリの平焼きパンを口に含む。
「あれは芸術だ。あれほどきれいな田圃はこの国のどこにもない。だいたいこの国ではメジャーで測って田植えすることはない。水田の形からしてそうだ。目分量で適当だ。本当に君たちは不思議な国民だ。田植えすらも芸術にしてしまう」
と唾液と混ざった平焼き食パンが良く見えるほど口をあけて話した。
朝食が済んでから、三人で裏庭の隅に放置されている耕運機を見に行った。
パンフレットによると、耕運機のこの型式では最大の九馬力の機種だ。
場長は大きく目を見開いたり、太い眉根を寄せたり、肩をすくめたり、両手を大きく広げたりして、耕運機がいつ、どうやって故障したのかを唾を飛ばして説明する。
「どこかの部品が不良らしい。エンジンがかからない」
と意見を求める。土岐の顔を覗き込んできた。
「たぶん、イグニッション系の故障じゃないかと思います」
と土岐は適当なことを言った。別の耕耘機から抜き取った燃料を少し入れた。キーを差し込んだ。形だけでもスタートさせようとした。無駄だった。内燃機関のことは何もわからない。始動方式がリコイルスターターであること以外はパンフレットにも書かれていない。外見では破損している部分はなかった。手入れがまったくなされていない。本体の赤い塗料が分厚い土埃の被膜に覆われていた。粗悪な安い燃料を使い、不純物でエンジンを傷めたのかも知れない。
正常な耕運機と部品を入れ替えた。あちこちをいじってみた。
「すいません。メカニックでないので、よくわかりません」
と詫びる。機器については藤四郎であることを白状した。
「アフタサービスとして直してもらえないだろうか。それが駄目なら、貴国の大使館と掛け合って、新品でも、中古品でもいいから、動くものと交換してもらえないだろうか」
と腰を少し斜に屈めた。場長は額に横皺をつくりながら哀訴する。
「わかりました。事務所に帰り次第、長谷川に伝えて善処させます」としか答えようがなかった。
厚さを確認しながら、一枚取った。
「さきほど、中庭から見ました」
と言うと、場長は紅茶に砂糖を入れながら大きくかぶりを振った。
「あそこからみえるのはほんの一部だ。あれだけではない」
と濃い狐色に焼け焦げたガリガリの平焼きパンを口に含む。
「あれは芸術だ。あれほどきれいな田圃はこの国のどこにもない。だいたいこの国ではメジャーで測って田植えすることはない。水田の形からしてそうだ。目分量で適当だ。本当に君たちは不思議な国民だ。田植えすらも芸術にしてしまう」
と唾液と混ざった平焼き食パンが良く見えるほど口をあけて話した。
朝食が済んでから、三人で裏庭の隅に放置されている耕運機を見に行った。
パンフレットによると、耕運機のこの型式では最大の九馬力の機種だ。
場長は大きく目を見開いたり、太い眉根を寄せたり、肩をすくめたり、両手を大きく広げたりして、耕運機がいつ、どうやって故障したのかを唾を飛ばして説明する。
「どこかの部品が不良らしい。エンジンがかからない」
と意見を求める。土岐の顔を覗き込んできた。
「たぶん、イグニッション系の故障じゃないかと思います」
と土岐は適当なことを言った。別の耕耘機から抜き取った燃料を少し入れた。キーを差し込んだ。形だけでもスタートさせようとした。無駄だった。内燃機関のことは何もわからない。始動方式がリコイルスターターであること以外はパンフレットにも書かれていない。外見では破損している部分はなかった。手入れがまったくなされていない。本体の赤い塗料が分厚い土埃の被膜に覆われていた。粗悪な安い燃料を使い、不純物でエンジンを傷めたのかも知れない。
正常な耕運機と部品を入れ替えた。あちこちをいじってみた。
「すいません。メカニックでないので、よくわかりません」
と詫びる。機器については藤四郎であることを白状した。
「アフタサービスとして直してもらえないだろうか。それが駄目なら、貴国の大使館と掛け合って、新品でも、中古品でもいいから、動くものと交換してもらえないだろうか」
と腰を少し斜に屈めた。場長は額に横皺をつくりながら哀訴する。
「わかりました。事務所に帰り次第、長谷川に伝えて善処させます」としか答えようがなかった。


