釣鐘状の四弁の赤と橙と黄色の小花の群がり咲くカランコエ。
中庭のほぼ中央にショレア・アクミナティッシマの巨木。天女の羽衣のように波打つ板根が四方八方にのた打ち回っていた。
さながら入園者の途絶えた手入れの悪い場末の植物園のようだ。中庭を左に行くと裏庭がある。大粒の砂礫の地面に雑草の撩乱が拡がる。その向こうに、縮緬絵のような青々とした水田がきらきらと輝いていた。稲の草丈は一ヤード程度。そこだけが周囲の野放図な風景と不釣合いなほど整然としていた。
部屋に戻った。壁に埋め込まれたLANコネクタを探した。見当たらない。それらしい事務用のテーブルすらない。無線LANも試してはみたが繋がらない。落胆した。
ヒタヒタという足音がして止まった。振り返るとドアの前にビゲンノラが裸足で立っていた。開かれたドアにノックしようとしている。目が合った。
「グッドモーニング、ビゲンノラ」
と声をかけた。彼女は驚いたように瞳孔を大きくして上目使いに、
「グッモーニン、サァ。ブレクファスト」
とクイーンズ・イングリッシュで言う。首をすくめている。部屋の中を流し目で覗いていた。
「すぐいきます。昨晩、夕食を食べたところですね」
と念を押すと、不意に、
「あなたは、かれと、同じ国のひと?」
とたどたどしい英語で質問をする。
「そうだけど、どうしてそんなこと聞くの?」
と首を少し傾げながら聞き返した。すると、
「だって、話し方、身ぶり、手ぶり、眼の表情、どれもみんな違う」と詰問するような瞳で訥々と言う。
「そう」
とだけ答えた。
彼女は食堂の方へ裸足の足音を立てて走っていった。
扇風機のスイッチを切った。鼓膜がかすかな痛みから解放された。荷物はそのままにして食堂にむかった。
食堂には派遣員と場長が着席していた。
テーブルの上には薄い平焼きパン、真黄色のカレー、白い塊の混ざったヨーグルト、甘そうなミルク紅茶が並べられていた。
二人と朝の挨拶を交わした。
「よく眠れたか?ミスター・トキ」
と場長が平焼きパンを千切りながら訊いてきた。
そう訊かれて朝方、硬く狭いベッドの上で幾度となく寝返りを打ったことを思いだした。
「ええ、よく眠れました」
と土岐はさしさわりなく答えた。
それにかぶせるように場長が言う。
「耕運機をみたあとは、田圃もぜひみてほしい」
中庭のほぼ中央にショレア・アクミナティッシマの巨木。天女の羽衣のように波打つ板根が四方八方にのた打ち回っていた。
さながら入園者の途絶えた手入れの悪い場末の植物園のようだ。中庭を左に行くと裏庭がある。大粒の砂礫の地面に雑草の撩乱が拡がる。その向こうに、縮緬絵のような青々とした水田がきらきらと輝いていた。稲の草丈は一ヤード程度。そこだけが周囲の野放図な風景と不釣合いなほど整然としていた。
部屋に戻った。壁に埋め込まれたLANコネクタを探した。見当たらない。それらしい事務用のテーブルすらない。無線LANも試してはみたが繋がらない。落胆した。
ヒタヒタという足音がして止まった。振り返るとドアの前にビゲンノラが裸足で立っていた。開かれたドアにノックしようとしている。目が合った。
「グッドモーニング、ビゲンノラ」
と声をかけた。彼女は驚いたように瞳孔を大きくして上目使いに、
「グッモーニン、サァ。ブレクファスト」
とクイーンズ・イングリッシュで言う。首をすくめている。部屋の中を流し目で覗いていた。
「すぐいきます。昨晩、夕食を食べたところですね」
と念を押すと、不意に、
「あなたは、かれと、同じ国のひと?」
とたどたどしい英語で質問をする。
「そうだけど、どうしてそんなこと聞くの?」
と首を少し傾げながら聞き返した。すると、
「だって、話し方、身ぶり、手ぶり、眼の表情、どれもみんな違う」と詰問するような瞳で訥々と言う。
「そう」
とだけ答えた。
彼女は食堂の方へ裸足の足音を立てて走っていった。
扇風機のスイッチを切った。鼓膜がかすかな痛みから解放された。荷物はそのままにして食堂にむかった。
食堂には派遣員と場長が着席していた。
テーブルの上には薄い平焼きパン、真黄色のカレー、白い塊の混ざったヨーグルト、甘そうなミルク紅茶が並べられていた。
二人と朝の挨拶を交わした。
「よく眠れたか?ミスター・トキ」
と場長が平焼きパンを千切りながら訊いてきた。
そう訊かれて朝方、硬く狭いベッドの上で幾度となく寝返りを打ったことを思いだした。
「ええ、よく眠れました」
と土岐はさしさわりなく答えた。
それにかぶせるように場長が言う。
「耕運機をみたあとは、田圃もぜひみてほしい」


