暑く濃く密な空気が膨らみきって頭の上にのしかかってくる。道路に照り返った暑気が先週買ったばかりの半袖ワイシャツの繊維の隙間からしみこんできた。体表近くの毛細血管が次第に膨らむ。汗が滲んでくる。赤茶けた道路の脇のココヤシの陰に逃げ込んだ。風はない。斑模様の葉陰をすり抜けた日差しが首筋に火箸のように突き刺さった。
長谷川は立ち止まって通りを見渡している。表通りに人影はなかった。自動車もほとんど走っていない。時折、欧州車や米国車が埃を巻き上げる。小石を蹴散らして疾走して行く。最初にやってきた三輪タクシーには現地の客が乗っていた。ひげ面の乗客が両手で幌の鉄筋の骨組にしがみついていた。僅かな揺れでも左右のタイヤが片方だけ沈み込む。座席から振り落とされそうになっていた。車体が右に揺れると頭は左へ、左に揺れると頭は右へ飛びだした。
通り沿いにゆっくりと歩きながら、長谷川がまた告白を始めた。
「この事務所に着任して三ヶ月ほど過ぎたころ、ゴンケイガウに手をだしたことがあった。夕方近くで所長とショスタロカヤが大使館に所用で呼ばれてた。コックがさっさと早退したんで事務所には二人しかいなかった。彼女は用もないのに机の前にやってきて頼まれもしないのに机の上を整理したり掃除したり、こちらに媚びた目線を送りながら肉厚な褐色の体を摺り寄せてきた」
と何のてらいもなく、
「時折高慢ちきになったり世話女房風になったりする佐知子とすったもんだの末に単身で転勤してきて女体から半年近く遠ざかっていた。衝動的に彼女の太り肉の腰に手を回した。彼女の肉体は椅子に腰掛けているこちらの太腿の上に吸い寄せられるようにしな垂れ掛かって来た。そのまま抱擁し、接吻し、ペッティングまで行った。彼女の性器の強烈な腐ったチーズのような臭いに興醒めして最後の一線は越えることはなかった」
と目線を遠くにやりながら、
長谷川は立ち止まって通りを見渡している。表通りに人影はなかった。自動車もほとんど走っていない。時折、欧州車や米国車が埃を巻き上げる。小石を蹴散らして疾走して行く。最初にやってきた三輪タクシーには現地の客が乗っていた。ひげ面の乗客が両手で幌の鉄筋の骨組にしがみついていた。僅かな揺れでも左右のタイヤが片方だけ沈み込む。座席から振り落とされそうになっていた。車体が右に揺れると頭は左へ、左に揺れると頭は右へ飛びだした。
通り沿いにゆっくりと歩きながら、長谷川がまた告白を始めた。
「この事務所に着任して三ヶ月ほど過ぎたころ、ゴンケイガウに手をだしたことがあった。夕方近くで所長とショスタロカヤが大使館に所用で呼ばれてた。コックがさっさと早退したんで事務所には二人しかいなかった。彼女は用もないのに机の前にやってきて頼まれもしないのに机の上を整理したり掃除したり、こちらに媚びた目線を送りながら肉厚な褐色の体を摺り寄せてきた」
と何のてらいもなく、
「時折高慢ちきになったり世話女房風になったりする佐知子とすったもんだの末に単身で転勤してきて女体から半年近く遠ざかっていた。衝動的に彼女の太り肉の腰に手を回した。彼女の肉体は椅子に腰掛けているこちらの太腿の上に吸い寄せられるようにしな垂れ掛かって来た。そのまま抱擁し、接吻し、ペッティングまで行った。彼女の性器の強烈な腐ったチーズのような臭いに興醒めして最後の一線は越えることはなかった」
と目線を遠くにやりながら、