と空港近代化事業の資金計画に関する情報の確認を求めてきた。
「長谷川によるとフィージビリティスタディの無償援助は撒き餌で。まあ本体の方は低利の政府借款で、利子補給分が開発援助ということになろうかと。いずれにしても貧乏人と商売をするときは延払信用が、つまり、ローンが鉄則で。というようなことを言ってました」
と教科書的な説明をした。土岐がかつてこの国に財務分析のスペシャリストとしてやってきたときに聞かされた国際コンサルタントの言説の受け売りだ。
「旧式の高額商品を売りつけて、こんな無邪気な貧しい国をまた食い物にするんですか?疑うことを知らない無垢な人々を相手に、賢い頭脳をこんなことに使って欲しくないものです」
とやや不満気だ。派遣員は二つのコップにビールを注ぎ足した。
「この国だけじゃなくて我が国の納税者も食い物にします。でも納税者にとってはGDPの一パーセント以下で、しかも国外の話だから。国内の財政投融資とは比較にならない。ここの一等書記官の加藤さんの話によれば、偏差値の低い国民には納税の義務はあるが、その税金を使う権利はない。税金を使う権利を持っているのは、偏差値の高い官僚だそうです」
と追従めいたことを土岐は言った。
「去年だったか、長谷川さんの事務所の所長さんはこんなことを言ってましたね。『肉体労働にも報酬があるように頭脳労働にも報酬がある。商社の頭脳労働は裁定取引にある。紀伊国屋文左衛門が蜜柑で大儲けしたことは悪い事だろうか。彼は江戸庶民に無理強いをして蜜柑を高く売った訳ではない。その価格で買いたいと思う人だけが買ったのだ。買いたくない人は一人も買っていない。貨幣の価値と蜜柑の価値を比べて、蜜柑の価値の方が低いと思った人は当然買わなかった。買った人は例外なく、蜜柑の価値の方を高く評価したはずだ。だから、商売は世のため人のため以外の何物でもない』と」
偏差値を引き合いにだしたことが派遣員の不興を買ったのか、話もビールもとんと弾まなかった。土岐は口直しに話題を変えた。
「耕運機のアフタサービスは明日の午前中でいいですか?」
と派遣員の返答をあらかじめ予想しながら了承を求めた。
「もちろんです。こんな夜じゃなにも見えないでしょう。それに暑い中、長距離移動でさぞお疲れでしょうし」
「長谷川によるとフィージビリティスタディの無償援助は撒き餌で。まあ本体の方は低利の政府借款で、利子補給分が開発援助ということになろうかと。いずれにしても貧乏人と商売をするときは延払信用が、つまり、ローンが鉄則で。というようなことを言ってました」
と教科書的な説明をした。土岐がかつてこの国に財務分析のスペシャリストとしてやってきたときに聞かされた国際コンサルタントの言説の受け売りだ。
「旧式の高額商品を売りつけて、こんな無邪気な貧しい国をまた食い物にするんですか?疑うことを知らない無垢な人々を相手に、賢い頭脳をこんなことに使って欲しくないものです」
とやや不満気だ。派遣員は二つのコップにビールを注ぎ足した。
「この国だけじゃなくて我が国の納税者も食い物にします。でも納税者にとってはGDPの一パーセント以下で、しかも国外の話だから。国内の財政投融資とは比較にならない。ここの一等書記官の加藤さんの話によれば、偏差値の低い国民には納税の義務はあるが、その税金を使う権利はない。税金を使う権利を持っているのは、偏差値の高い官僚だそうです」
と追従めいたことを土岐は言った。
「去年だったか、長谷川さんの事務所の所長さんはこんなことを言ってましたね。『肉体労働にも報酬があるように頭脳労働にも報酬がある。商社の頭脳労働は裁定取引にある。紀伊国屋文左衛門が蜜柑で大儲けしたことは悪い事だろうか。彼は江戸庶民に無理強いをして蜜柑を高く売った訳ではない。その価格で買いたいと思う人だけが買ったのだ。買いたくない人は一人も買っていない。貨幣の価値と蜜柑の価値を比べて、蜜柑の価値の方が低いと思った人は当然買わなかった。買った人は例外なく、蜜柑の価値の方を高く評価したはずだ。だから、商売は世のため人のため以外の何物でもない』と」
偏差値を引き合いにだしたことが派遣員の不興を買ったのか、話もビールもとんと弾まなかった。土岐は口直しに話題を変えた。
「耕運機のアフタサービスは明日の午前中でいいですか?」
と派遣員の返答をあらかじめ予想しながら了承を求めた。
「もちろんです。こんな夜じゃなにも見えないでしょう。それに暑い中、長距離移動でさぞお疲れでしょうし」


