横断歩道を渡ると交番の前を通らずに済むが、JRのガード下で再び中央通りにかかる横断歩道を渡らなければならない。土岐は遠回りになるが交番の前を通らずに中央通りをアメ横商店街方向に横断歩道を渡った。交番の対面にパチンコ屋がある。その左隣は巨大タンカーの船首のような形をした家電量販店のビル。歩道をすすむにつれてビルの奥行きが狭くなる。ガード下の通りの入り口でアメ横商店街をのぞける。家電量販店の裏側の最初のビルは首都圏を中心にチェーン展開しているドラッグストア。店員が路面に商品ワゴンを設置している。信号が変わった。ガード下の20メートルほどの幅広の横断歩道を歩行する群衆に身を任せて渡る。右手に地下鉄と地下街への入り口が口を開けている。その手前をタクシーが縦列で待機している。
最初の監視カメラの画像は、九時半に地下鉄銀座線の改札近くの地下街で撮られている。
喫茶好奇からまだ十分も歩いていない。監視カメラの位置を確認する。地下通路の天井の端から、地下通路の奥に向けてレンズが固定されている。広角に浅草方面の改札と銀座方面の改札と券売機がとらえられている。画像のコピーではジャージーを着て、野球帽を目深にかぶり、白いマスクであごを覆った男が煙草にライターで火をつけている。通路の中心だ。肩にクロスボウを入れた袋のひもをかけている。顔は見えない。正面を向いている。うつむき加減の角度から野球帽のニューヨークヤンキースのロゴがかろうじて見える。静止して煙草に火をつけている。画像にぶれがない。画像の位置関係を確認する。背後に映っている柱の模様から男の身長が百七十センチ前後だと推測できる。真田はここから、地下鉄銀座線に乗り、稲荷町、田原町を経て、浅草に向かったことになっている。
 二番目の画像は、九時四十五分に浅草駅の改札を出たところで撮られている。最初の画像同様に監視カメラに正対し、タバコに火をつけている。同じジャージー、同じ野球帽、同じ白いマスク、同じ袋を肩にかけていることが確認できる。