ラの七地点の映像のコピーがある。顔写真は髪の薄いしゃくれ顎の細面が今田で、長髪で丸顔が真田だ」
 土岐は差し出されたA4のカラーコピーを手に取った。パラパラとめくった。左の列に時刻、右二列に真田が主張するアリバイと検察のストーリーが対比されている。ページの下には小さいポイントで脚注がひしめきあっている。カラーコピー写真の今田も真田も一様に顔色が悪い。疲労困憊しきったような表情。口角が垂れている。とくに殺害された今田の顔には目の下と頬に薄らとした影のような死相が出ている。資料の最後に今田の死体検案書が添付されている。資料に目を落としながら土岐が言う。
「それで、今回の調査は?」
「やればやるほど赤字になるので、何も依頼したくないのだが、恰好だけはつけないと。・・・裁判所が認めてくれる費用の範囲内で体裁を整えたいので真田が主張するアリバイと検察のストーリーを簡単に検証してくれないか。ざっとでいいから明日の昼過ぎに結果を教えてくれ。それを持って接見に行く。接見に行けば多少小遣い稼ぎになる」
「でも、・・・まだ、どういう調査結果になるかわからないでしょ」と宇多の顔を上目づかいに見ながら、土岐は缶コーヒーに手を伸ばす。
「いやあ、ついでがあるんだ。近くを通るから、接見する。接見すればカネになる」
「へえ。会うだけでカネをもらえんですか」
「国選はいろんなことで、チマチマとカネを出してくれる。単価は安いから、ポイントで稼ぐしかない。ただ、単価の規定が微に入り細を穿っているから、請求書類を作るのが面倒だ」と言うのを聞いて、土岐は缶コーヒーを持ったまま帰宅した。