「すいません。ちょっと込み入った話なんで、できれば、お会いしたいんですが」
「・・・それじゃ、田端駅前の喫茶店でどうですか」
「ありがとうございます。何時ごろうかがえばよろしいですか?」
「・・・そうですね、・・・二時ごろで・・・」
「わかりました。で、喫茶店の名前は?」
「・・・ナカヤマといいます」
「僕は土岐といいますが、そちらは?」
「・・・土橋といいます」
「ドバシさんですね。では2時に田端のナカヤマで」と言いながら電話番号を登録した。
十一時半ごろ、千寿南クリニックの玄関から三十前後の薄いブルーのビジネススーツの男が出てきた。七三に分けた頭髪が外光に艶めいている。土岐はレジに代金を置いて、喫茶店を飛び出した。男はライトバンのエンジンをかけたところだった。土岐は駆けつけて頭を下げながら窓をノックした。男はパワーウインドーを半分下げて、怪訝そうに土岐を見上げる。
「千寿南クリニックのことで、ちょっとよろしいでしょうか?」と土岐は名刺を差し出した。
「・・・どんなことですか?」と男は受け取った名刺に目を落とす。
「ちょっと、込み入ってるんで・・・」
「・・・と、言われても・・・」と言いながら土岐の名刺を背広の胸ポケットに入れる。
「その辺のファミレスで、ランチでもとりながら、いかがですか?」
「・・・じゃあ」と言うのを聞いて、いきなり土岐は強引に後部座席に滑り込んだ。
男は素盞雄神社角の天王前交番を右手に日光街道を入谷方向に左折し、下谷警察向かい近くのファミリーレストランの駐車場にシルバーメタリックのBMWのライトバンを駐車させた。男が先に出る。土岐が出るのを見てからリモートコントロールでロックをかけて歩く。
駐車場の上に店舗がある。満席に近い。厨房に近い黄土色のボックス座席が空いていた。二人で腰を下ろすとおさげ髪のウエイトレスがメニューを持ってきた。ネームカードでベトナム人と分かる。男はメニューを見ながら紙おしぼりで手を拭く。土岐はウエイトレスに日替わりランチを注文した。男はハンバーグステーキを注文した。土岐は本題を話し出した。
「治験ボランティアをやってた今田という人が、この1月に殺害されたのはご存知ですよね」
男は自分の名刺を名刺入れから取り出した。佐藤博という名前だ。
「・・・ええ。・・・しばらくしてから、誰かから聞きました」
「・・・それじゃ、田端駅前の喫茶店でどうですか」
「ありがとうございます。何時ごろうかがえばよろしいですか?」
「・・・そうですね、・・・二時ごろで・・・」
「わかりました。で、喫茶店の名前は?」
「・・・ナカヤマといいます」
「僕は土岐といいますが、そちらは?」
「・・・土橋といいます」
「ドバシさんですね。では2時に田端のナカヤマで」と言いながら電話番号を登録した。
十一時半ごろ、千寿南クリニックの玄関から三十前後の薄いブルーのビジネススーツの男が出てきた。七三に分けた頭髪が外光に艶めいている。土岐はレジに代金を置いて、喫茶店を飛び出した。男はライトバンのエンジンをかけたところだった。土岐は駆けつけて頭を下げながら窓をノックした。男はパワーウインドーを半分下げて、怪訝そうに土岐を見上げる。
「千寿南クリニックのことで、ちょっとよろしいでしょうか?」と土岐は名刺を差し出した。
「・・・どんなことですか?」と男は受け取った名刺に目を落とす。
「ちょっと、込み入ってるんで・・・」
「・・・と、言われても・・・」と言いながら土岐の名刺を背広の胸ポケットに入れる。
「その辺のファミレスで、ランチでもとりながら、いかがですか?」
「・・・じゃあ」と言うのを聞いて、いきなり土岐は強引に後部座席に滑り込んだ。
男は素盞雄神社角の天王前交番を右手に日光街道を入谷方向に左折し、下谷警察向かい近くのファミリーレストランの駐車場にシルバーメタリックのBMWのライトバンを駐車させた。男が先に出る。土岐が出るのを見てからリモートコントロールでロックをかけて歩く。
駐車場の上に店舗がある。満席に近い。厨房に近い黄土色のボックス座席が空いていた。二人で腰を下ろすとおさげ髪のウエイトレスがメニューを持ってきた。ネームカードでベトナム人と分かる。男はメニューを見ながら紙おしぼりで手を拭く。土岐はウエイトレスに日替わりランチを注文した。男はハンバーグステーキを注文した。土岐は本題を話し出した。
「治験ボランティアをやってた今田という人が、この1月に殺害されたのはご存知ですよね」
男は自分の名刺を名刺入れから取り出した。佐藤博という名前だ。
「・・・ええ。・・・しばらくしてから、誰かから聞きました」