「こんなとこじゃなんですから、駅ナカの店で座ってお話しできませんか?」と言う土岐の顔と遠ざかってゆく電車を女は幾度も見比べる。そのたびに土岐は頭を下げ、女のパンプスの足元に目を落とす。女は応諾をはっきりさせない。
「とりあえず、駅ナカへ」と土岐は女の瞳を凝視する。女は右肩をすくめる。それを合図に右目の隅で女を確認しながら土岐は駅ナカの喫茶店へ向かった。
「突然すいません。僕、土岐明といいます。法律事務所の手伝いをしてます」
女は細い指で挟んだ名刺をじっと見つめている。
「千寿南クリニックに今田というひとが出はいりしてたと思うんですが・・・」
「一月に亡くなった方?」と顔を上げながら聞く女の瞳が不安げに小刻みに揺れている。
「その犯人として真田という男が裁判にかけられてるんですが彼は無実です。2人の接点がよくわからないんですが今田さんは千寿南クリニックで、どういうことをしてたんですか?」
「・・・治験に、参加していた、・・・と思います」
「それだけ、・・・ですか?」
「・・・近くに住む人にいろいろな治験の紹介をしてくれていたと思います」
「どういう経緯で、今田さんが治験に参加するようになったんですか?」
「あのあたりは工場が多くて地元住民があまり多くないんです。老人や生活保護の人は多いんですが健康保険証を持っていない人も多くて、それであのクリニックはクランケが少なくって、院長先生が治験の指定病院に参加することになったんです。ネットで治験ボランティアを募るんですが、都心から少し距離があって集まりがあまりよくなくって。そんな時、今田さんがたくさんボランティアを紹介してくれて、去年一年間は、とても忙しかったんです」
「治験参加者をなんでボランティアと言うんですか?お金を払ってるんですよね」
「売血と同じで治験を生活の糧にされると困るんで。治験に参加すると負担軽減費で現金をお渡しするんですが、お小遣い程度の金額なんでそれで生活することはできないと思います」
「でも、・・・今田さんは相当収入があったようですが、・・・」
「・・・たぶん、ボランティアの紹介料じゃないでしょうか」
「1人いくらぐらいですか?」
「・・・数千円だと思います」
「今田さんは何人位紹介したんですか?」
「・・・一年で、累計五十人程度だと思います」
「とりあえず、駅ナカへ」と土岐は女の瞳を凝視する。女は右肩をすくめる。それを合図に右目の隅で女を確認しながら土岐は駅ナカの喫茶店へ向かった。
「突然すいません。僕、土岐明といいます。法律事務所の手伝いをしてます」
女は細い指で挟んだ名刺をじっと見つめている。
「千寿南クリニックに今田というひとが出はいりしてたと思うんですが・・・」
「一月に亡くなった方?」と顔を上げながら聞く女の瞳が不安げに小刻みに揺れている。
「その犯人として真田という男が裁判にかけられてるんですが彼は無実です。2人の接点がよくわからないんですが今田さんは千寿南クリニックで、どういうことをしてたんですか?」
「・・・治験に、参加していた、・・・と思います」
「それだけ、・・・ですか?」
「・・・近くに住む人にいろいろな治験の紹介をしてくれていたと思います」
「どういう経緯で、今田さんが治験に参加するようになったんですか?」
「あのあたりは工場が多くて地元住民があまり多くないんです。老人や生活保護の人は多いんですが健康保険証を持っていない人も多くて、それであのクリニックはクランケが少なくって、院長先生が治験の指定病院に参加することになったんです。ネットで治験ボランティアを募るんですが、都心から少し距離があって集まりがあまりよくなくって。そんな時、今田さんがたくさんボランティアを紹介してくれて、去年一年間は、とても忙しかったんです」
「治験参加者をなんでボランティアと言うんですか?お金を払ってるんですよね」
「売血と同じで治験を生活の糧にされると困るんで。治験に参加すると負担軽減費で現金をお渡しするんですが、お小遣い程度の金額なんでそれで生活することはできないと思います」
「でも、・・・今田さんは相当収入があったようですが、・・・」
「・・・たぶん、ボランティアの紹介料じゃないでしょうか」
「1人いくらぐらいですか?」
「・・・数千円だと思います」
「今田さんは何人位紹介したんですか?」
「・・・一年で、累計五十人程度だと思います」