マンクング社製のクロスボウは都内数か所のショップとネット通販で扱われている。上野、御徒町近辺でクロスボウを販売している店舗を探したところ、御徒町で犯行前日にクロスボウとその格納袋を購入した男を突き止めた。同時に殺人現場近くの隅田川の土手の茂みの中からクロスボウが発見された。クロスボウを売ったという店員から風体と人相を聞き出し、監視カメラの画像をもとに近辺を聞き込み、捜索したところ、喫茶好奇のアルバイト店員にたどりついた。クロスボウと矢から真田の指紋が検出された。二月になって真田は夜、ネット喫茶に現れたところを通常逮捕された。所持していたクロスボウ格納用の緑の袋の中からピューマのジャージーとニューヨークヤンキースの野球帽と白いマスクが押収された。
土岐はそこまで資料を読み込んで、資料に記載されている今田の住所であるホテル小林をたよりに、南千住に向かうことにした。九段下から東西線で竹橋、大手町、日本橋を経て、茅場町で日比谷線に乗り換え、北千住行に乗って人形町、小伝馬町、秋葉原、仲御徒町、上野、入谷、三ノ輪を経て南千住についたのは3時頃だった。今田が住所としていたドヤ街は駅を出て、ガードをくぐった泪橋の交差点から浅草方向に数分のところにあった。明治通りから一本裏通りに入ると、すべての電信柱に木賃宿の看板が張り出されている。裏通りの中央に立つと木賃宿の看板しか見えない。連れ込み宿のような名称や近代ホテルのような名称が重なり合うように狭い通りに林立している。空も通りも異様に狭く感じられた。土岐は通りの中ほどにあるホテル小林の玄関に立った。木造モルタルの建付けの悪い引き戸の奥に病院の受付のような木のカウンターがあり、腰の高さに管理人の小窓があった。その小窓を少し開け、声をかけた。しばらくして、首にピンクのうすいスカーフを巻いた銀髪の老婆が顔を出した。胡散臭い奥まった目つきで土岐をまぶしそうに見上げる。話し出すそぶりがない。
「今田さんのことで、すこし話をうかがいたいんですが、・・・」
「・・・イマダ?」と老婆は巾着のような口でガムをかむようにおうむがえす。
「3か月ぐらい前まで、ここに住んでた人です」
「知らないね」と老婆はしわだらけの指で小窓を閉めようとする。
土岐はとっさに右手を差し入れた。
「スポーツセンターで殺された人なんですけど、・・・」
土岐はそこまで資料を読み込んで、資料に記載されている今田の住所であるホテル小林をたよりに、南千住に向かうことにした。九段下から東西線で竹橋、大手町、日本橋を経て、茅場町で日比谷線に乗り換え、北千住行に乗って人形町、小伝馬町、秋葉原、仲御徒町、上野、入谷、三ノ輪を経て南千住についたのは3時頃だった。今田が住所としていたドヤ街は駅を出て、ガードをくぐった泪橋の交差点から浅草方向に数分のところにあった。明治通りから一本裏通りに入ると、すべての電信柱に木賃宿の看板が張り出されている。裏通りの中央に立つと木賃宿の看板しか見えない。連れ込み宿のような名称や近代ホテルのような名称が重なり合うように狭い通りに林立している。空も通りも異様に狭く感じられた。土岐は通りの中ほどにあるホテル小林の玄関に立った。木造モルタルの建付けの悪い引き戸の奥に病院の受付のような木のカウンターがあり、腰の高さに管理人の小窓があった。その小窓を少し開け、声をかけた。しばらくして、首にピンクのうすいスカーフを巻いた銀髪の老婆が顔を出した。胡散臭い奥まった目つきで土岐をまぶしそうに見上げる。話し出すそぶりがない。
「今田さんのことで、すこし話をうかがいたいんですが、・・・」
「・・・イマダ?」と老婆は巾着のような口でガムをかむようにおうむがえす。
「3か月ぐらい前まで、ここに住んでた人です」
「知らないね」と老婆はしわだらけの指で小窓を閉めようとする。
土岐はとっさに右手を差し入れた。
「スポーツセンターで殺された人なんですけど、・・・」