「似たようなものだ。岩手から東京に出てきて高卒で葛飾のある輸出企業の孫請けに就職したが円高の直撃を受けて会社は倒産。その後、派遣会社に登録し不安定な生活をしていたがアパートの家賃を滞納して山谷のドヤ街をうろつくようになった。派遣会社で社員と喧嘩してリストラされ、それ以来日雇いで生計を立てて」といい終えて宇多は深いため息をはいた。
「それで、僕はこれから何をすれば?」
「第二回の公判のとき、証人として喚問するかも知れないので検察のストーリーを覆すような情報を探してくれないか。あるいは真田の主張するアリバイを立証するようなネタでもいい。いずれにしても裁判所が証人として認めてくれればお前に交通費と日当が支払えるので」
「ということは、ギャラはこの事務所からでなくって、裁判所から貰えということですか?」
「すまん。この事案はただでさえ赤字だ。この埋め合わせはいずれ別の依頼でなんとかする」
釈然としないが土岐は承服せざるを得ない。今のところ、他に仕事がない。
「これから別件で出かける。手持ちの資料を全部渡すので、証人喚問のネタを探してくれ」と言いながら宇多は立ち上がった。隣の事務室で女秘書に何かを指示し、事務所の外に出てゆく気配がした。宇多が応接室を出たあと、土岐は資料をその場で検討することにした。資料はいくつかのテーマごとにダブルクリップで分別されていた。最初に土岐の目に止まったのは真田がエントリーした商品モニターに関する情報だった。宇多が真田に接見したときのメモをもとに作成したもので、まとまりがよくない。ワープロで作成したのは秘書だろうが、断片的な情報が羅列されているだけで、できがよくない。宇多の力の抜き加減がよくわかる。
資料によると真田は去年の暮、アルバイト募集のサイトで商品モニターの掲示を見つけ、エントリーした。氏名、住所、年齢、職業、身長、体重、喫煙歴、同居人、モニター会場までのアクセスなどの質問項目があり、守秘義務の説明があった。虚偽の記入があった場合は失格になるという一文があったので職業は正直にフリーターと記入した。喫煙歴は十年、モニター会場までの交通は都バスで、上野公園から隅田公園とした。住所は好奇にした。
「それで、僕はこれから何をすれば?」
「第二回の公判のとき、証人として喚問するかも知れないので検察のストーリーを覆すような情報を探してくれないか。あるいは真田の主張するアリバイを立証するようなネタでもいい。いずれにしても裁判所が証人として認めてくれればお前に交通費と日当が支払えるので」
「ということは、ギャラはこの事務所からでなくって、裁判所から貰えということですか?」
「すまん。この事案はただでさえ赤字だ。この埋め合わせはいずれ別の依頼でなんとかする」
釈然としないが土岐は承服せざるを得ない。今のところ、他に仕事がない。
「これから別件で出かける。手持ちの資料を全部渡すので、証人喚問のネタを探してくれ」と言いながら宇多は立ち上がった。隣の事務室で女秘書に何かを指示し、事務所の外に出てゆく気配がした。宇多が応接室を出たあと、土岐は資料をその場で検討することにした。資料はいくつかのテーマごとにダブルクリップで分別されていた。最初に土岐の目に止まったのは真田がエントリーした商品モニターに関する情報だった。宇多が真田に接見したときのメモをもとに作成したもので、まとまりがよくない。ワープロで作成したのは秘書だろうが、断片的な情報が羅列されているだけで、できがよくない。宇多の力の抜き加減がよくわかる。
資料によると真田は去年の暮、アルバイト募集のサイトで商品モニターの掲示を見つけ、エントリーした。氏名、住所、年齢、職業、身長、体重、喫煙歴、同居人、モニター会場までのアクセスなどの質問項目があり、守秘義務の説明があった。虚偽の記入があった場合は失格になるという一文があったので職業は正直にフリーターと記入した。喫煙歴は十年、モニター会場までの交通は都バスで、上野公園から隅田公園とした。住所は好奇にした。