その声を背中で聞いて土岐は外に出た。六時近くになっていた。真っ暗だ。三田は、『学僧兵』の網田雄蔵のモデルかも知れないという思いがした。
今出川通に出て、昨夜泊った〈ビジネスホテル大原〉に予約の電話を入れてみた。
夕食を今出川通の京都大学近くの大衆食堂でとって、〈ビジネスホテル大原〉に向かった。途中のコンビニエンス・ストアで第三のビール二本とスナックのポテトチップス一袋を買い込んだ。〈ビジネスホテル大原〉に着くと、昨夜と同じ、赤いチョッキのホテルマンが笑顔で出迎えてくれた。フロントでチェックインして鍵を受け取り、5階の部屋に入るとショルダーバッグをベッドの上に投げ置いて、一階のパソコンルームで、紳士録から清和俊彦の交友録をもう一度チェックした。久邇頼道を検索した。その肩書は、ブランド物の専門商社である久邇商会という商社の会長になっていた。土岐はそれをシステム手帳にメモした。5階の部屋に戻ると、第三のビールを飲む前に、備え付けの小さな机の上で早速、システム手帳に調査日誌を書いた。
民宿美山(十月三日 日曜日)
翌朝、土岐は十時にチェックアウトを済ますと、曇天の下を徒歩で京都駅に向かった。十月にしては暖かい駅ビルでBLTとアメリカンコーヒーのブランチを取った。十一時過ぎの特急北越5号で糸魚川に向かった。長田賢治に会うのが目的だった。見城仁美の父方の祖父になる。廣川弘毅が死ぬ直前に区立図書館の貸出カードを作ってまでして読んだ絶版の塔頭哲斗の小説『学僧兵』の主人公と同じ出身地ということが気になっていた。今回の調査のカギとなる目撃者である見城仁美の証言を搦め手から覆すための材料を仕入れるのも目的だった。
列車は北陸の秋の弱い日差しの中の殺伐とした刈り入れ後の田園風景を走り続けた。進行方向の右手に迫りくる小さな白い帽子をかぶった山肌に圧迫されながら、左手に利休鼠の日本海を垣間見て安らぎを覚えた。
糸魚川には三時過ぎに到着した。海側に開けた駅前広場には高層ビルが全くなく、この町の経済力がうかがい知れた。改札を出て右手に開いていた観光案内所で、横町への道順を教えてもらった。
今出川通に出て、昨夜泊った〈ビジネスホテル大原〉に予約の電話を入れてみた。
夕食を今出川通の京都大学近くの大衆食堂でとって、〈ビジネスホテル大原〉に向かった。途中のコンビニエンス・ストアで第三のビール二本とスナックのポテトチップス一袋を買い込んだ。〈ビジネスホテル大原〉に着くと、昨夜と同じ、赤いチョッキのホテルマンが笑顔で出迎えてくれた。フロントでチェックインして鍵を受け取り、5階の部屋に入るとショルダーバッグをベッドの上に投げ置いて、一階のパソコンルームで、紳士録から清和俊彦の交友録をもう一度チェックした。久邇頼道を検索した。その肩書は、ブランド物の専門商社である久邇商会という商社の会長になっていた。土岐はそれをシステム手帳にメモした。5階の部屋に戻ると、第三のビールを飲む前に、備え付けの小さな机の上で早速、システム手帳に調査日誌を書いた。
民宿美山(十月三日 日曜日)
翌朝、土岐は十時にチェックアウトを済ますと、曇天の下を徒歩で京都駅に向かった。十月にしては暖かい駅ビルでBLTとアメリカンコーヒーのブランチを取った。十一時過ぎの特急北越5号で糸魚川に向かった。長田賢治に会うのが目的だった。見城仁美の父方の祖父になる。廣川弘毅が死ぬ直前に区立図書館の貸出カードを作ってまでして読んだ絶版の塔頭哲斗の小説『学僧兵』の主人公と同じ出身地ということが気になっていた。今回の調査のカギとなる目撃者である見城仁美の証言を搦め手から覆すための材料を仕入れるのも目的だった。
列車は北陸の秋の弱い日差しの中の殺伐とした刈り入れ後の田園風景を走り続けた。進行方向の右手に迫りくる小さな白い帽子をかぶった山肌に圧迫されながら、左手に利休鼠の日本海を垣間見て安らぎを覚えた。
糸魚川には三時過ぎに到着した。海側に開けた駅前広場には高層ビルが全くなく、この町の経済力がうかがい知れた。改札を出て右手に開いていた観光案内所で、横町への道順を教えてもらった。


