土岐は団地の玄関先で坂本に別れを告げたその足で、千里中央のネットカフェに寄り、センチュリー監査法人をウェッブ検索してみた。
該当する件数は二ケタもなかった。そのうちの一つが、セントラル監査法人のサイト内にあった。その記述は、社史の中にあった。センチュリー監査法人は、昭和五十五年にセントラル監査法人に吸収されていた。
長瀬啓志は昭和五十五年にセントラル監査法人の代表社員になっている。廣川弘毅は粉飾決算を知っていた。坂本茂にインタビューしたのは、不良在庫の情報が工場長から流れたと思わせることにあった。坂本茂はおとりだ。
警察はその筋書きに沿って、坂本茂を取り調べた。坂本は吐かなかった。吉野刑事は嘘をつき通したと思い込んでいる。センチュリー監査法人には手を回さなかった。
廣川弘毅は株取引には一切手を出さず、リスクを冒した見返りに、第三者が空売りから得た株式売買益の一部を受け取った。支払い手段は、雑誌広告費か雑誌購読料で、一括払いではなく、長期の支払いにした。カネの流れに不自然さがない。廣川弘毅は株主総会に出席する必要も、企業の総務部に恐喝をかける必要もない。
長瀬啓志も株取引には一切手を出さず、何らかの形で報酬を受け取った。
インサイダー取引規制が厳格になるまで、こうした足のつかないぼろ儲けを繰り返していた。
御堂筋線で新大阪に着いたとき、既に三時を過ぎていた。晩秋に追われた淡い陽光は、頼りなげに西に傾いていた。
東海道本線の快速で高槻を経て京都に着いたのはちょうど四時だった。
ガイドブックで地図を見て、智恩寺の場所を確認した。智恩寺の北には隣接するように、清浄寺があった。
『学僧兵』の巻末の年譜で確かめると、清浄寺は作家塔頭哲斗が出家した禅寺だった。
市バスで智恩寺に到着したのは、四時半ごろだった。
東京や大阪と比べると高層ビルの少ない分、空が広く感じられる。
すでにあたりには、ひんやりとした秋の夜のとばりが降り始めていた。土岐の無防備な首筋を比叡山からの寒風がかすめた。
東京からウェッブ予約した〈ビジネスホテル大原〉という宿は壱萬遍の交差点を挟んで、京都大学と対角線の位置にあった。
先にチェックインをすませ、荷物を置いて、手ぶらになって智恩寺に向かった。東大路通を渡って、駐車場を抜けて山門をくぐって庫裡の玄関で声をかけた。
該当する件数は二ケタもなかった。そのうちの一つが、セントラル監査法人のサイト内にあった。その記述は、社史の中にあった。センチュリー監査法人は、昭和五十五年にセントラル監査法人に吸収されていた。
長瀬啓志は昭和五十五年にセントラル監査法人の代表社員になっている。廣川弘毅は粉飾決算を知っていた。坂本茂にインタビューしたのは、不良在庫の情報が工場長から流れたと思わせることにあった。坂本茂はおとりだ。
警察はその筋書きに沿って、坂本茂を取り調べた。坂本は吐かなかった。吉野刑事は嘘をつき通したと思い込んでいる。センチュリー監査法人には手を回さなかった。
廣川弘毅は株取引には一切手を出さず、リスクを冒した見返りに、第三者が空売りから得た株式売買益の一部を受け取った。支払い手段は、雑誌広告費か雑誌購読料で、一括払いではなく、長期の支払いにした。カネの流れに不自然さがない。廣川弘毅は株主総会に出席する必要も、企業の総務部に恐喝をかける必要もない。
長瀬啓志も株取引には一切手を出さず、何らかの形で報酬を受け取った。
インサイダー取引規制が厳格になるまで、こうした足のつかないぼろ儲けを繰り返していた。
御堂筋線で新大阪に着いたとき、既に三時を過ぎていた。晩秋に追われた淡い陽光は、頼りなげに西に傾いていた。
東海道本線の快速で高槻を経て京都に着いたのはちょうど四時だった。
ガイドブックで地図を見て、智恩寺の場所を確認した。智恩寺の北には隣接するように、清浄寺があった。
『学僧兵』の巻末の年譜で確かめると、清浄寺は作家塔頭哲斗が出家した禅寺だった。
市バスで智恩寺に到着したのは、四時半ごろだった。
東京や大阪と比べると高層ビルの少ない分、空が広く感じられる。
すでにあたりには、ひんやりとした秋の夜のとばりが降り始めていた。土岐の無防備な首筋を比叡山からの寒風がかすめた。
東京からウェッブ予約した〈ビジネスホテル大原〉という宿は壱萬遍の交差点を挟んで、京都大学と対角線の位置にあった。
先にチェックインをすませ、荷物を置いて、手ぶらになって智恩寺に向かった。東大路通を渡って、駐車場を抜けて山門をくぐって庫裡の玄関で声をかけた。


