法蔵飛魂

「・・・まあ、有力な証拠になる可能性はあるが、スリー・サムで回っている」
「もう一人いたのか。誰だ?」
「・・・金井泰三という金田義明の友人だ」
「菊名で不動産屋とリフォーム屋をやっているやつか」
「・・・さすが、よくご存じで・・・」
「情報提供のお礼に、この情報の出どこを教えてやろう。廣川浩司だ」
「・・・ああ、あの弟さんの。と言うことは金田民子と金井泰三の関係を聞いたんですか?」
 ここで、土岐はかまをかけてみた。
「二人は『懇ろだ』という話だった」
「クライアントにとって不利な情報なので、同業の仁義にのっとって、内密に願います」
 土岐は澤田に感づかれないように、心の中でほくそえんだ。
「で、その、金井泰三というのは、企業舎弟だとか」
「いやあ、盃は受けていないから、企業舎弟と言えるのかどうか。気質的には金田民子とそっくりで、だから気があうと言えるんだろうけど・・・」
「気があうと言うのは?」
「・・・ゼニゲバという点だ。今回の浮気調査の契約で、金田民子にしつこく値切られた」
「そもそも、民子はどういう経緯で金田義明と一緒になったの?」
「金井泰三は若いころ、総会屋の使いっ走りをやっていた。その関係で廣川弘毅と関係ができて、金田義明はそのポン友だった。最初は金井泰三が民子にモーションをかけたのだが、廣川弘毅に一喝された。『お前みたいなチンピラに民子はやれない』だとさ。民子が金田と離婚直前にある状況で、金井の焼け棒杭に火がついてもおかしくない。そろそろ、そちらさんの経歴を話してもらえますか。調査費の掛りそうな情報をお願いしますよ」
 澤田は懐から、少し大きめのメモ帳を取り出した。
 土岐は聞き取りには慣れているが、聞きとられるのは不慣れなので少し身構えた。裏の取れない嘘を半分、裏の取れそうな真実を半分混ぜることにした。
 澤田はメモ帳にボールペンの先を突き立てて、呆れかえったように吐く。
「最後に、金田義明と金井泰三の写真を見せてくれ」
 澤田は子犬のような鼻先でフンと返事をして、ポケットから極薄のデジタルカメラをとりだして、レビューモードにする。土岐が液晶画面を覗き込むと、クラブハウスのレストランで佐藤加奈子をはさんで二人の男が生ビールのジョッキを傾けている。
「加奈子の右が金田義明で、左が金井泰三」