「おれの経歴でどう?」
澤田は青黒く薄い唇で下卑た含み笑いをする。
「情報としてはあまりクライアントは評価しないだろが、実費は請求できるな」
と言う話を聞きながら、土岐が金田民子の落合のマンションに行ったのを澤田が知らないことを察知した。民子が澤田の依頼人だとすれば、土岐の履歴には一銭の価値もない。
土岐は澤田の話を確認した。
「クライアントが評価しないというのはどうしてだ」
「・・・だって、お宅、廣川弘毅の事件を調査しているんでしょ?」
「それを知っているということは盗聴器か?・・・玄関脇の固定電話だな」
「・・・まあ、想像にお任せしますが・・・」
「いや、おれがこの足で盗聴器を調べに行ったら困るでしょ?」
「・・・それじゃ、自分で自分の首を絞めることになる」
「どうしてだ」
澤田は小ずるそうなイタチのような眼をさらに弓なりに細めて言う。
「・・・これから先、こちらの情報がおたくに提供できなくなるでしょ」
「いやあ、お互い様だ。・・・クライアントの利益に、・・・というのがこの業界の鉄則だ。固定電話に盗聴器が仕掛けられているのに、黙っていたら業務義務違反になる」
「そうかも知れないけどクライアントがすべての情報を提供しているとは限らない」
「盗聴器のことは黙っていよう。佐藤加奈子と金田義明の関係を先に言ってくれ」
澤田は再度、筋張った首を伸ばしてあたりを見回した。白眼が異様に大きい。黒目が点のように見える。ブレンドコーヒーが運ばれてきてウエイトレスの重そうな腰が立ち去るのを待っていた。
澤田は必要以上に小さな声で囁いた。聞き取りにくい。
「・・・あの二人はできている」
「男と女の関係ということか?」
「・・・そうなんだけどね、なかなか尻尾を出さない」
「五年間もか?」
「・・・いやあ、この調査は廣川弘毅が亡くなった直後からだ」
「だって、離婚訴訟は五年近くやってるんでしょ」
「五年は別居の期間。財産分与を巡って裁判を始めたのは去年から。民子が自己主張が強くて強欲で身勝手なことばかり言うもんだから裁判官を怒らせちゃって、だいぶ心証を悪くしたみたいで、どうしても客観的な証拠が必要だってんで興信所に依頼したというわけ」
「内縁関係ではあるが若い後妻と、義理の息子か、・・・あかの他人だから、よくある痴話ばなしではあるが、・・・で、ふたりは本当に男女関係なのか?」
澤田は青黒く薄い唇で下卑た含み笑いをする。
「情報としてはあまりクライアントは評価しないだろが、実費は請求できるな」
と言う話を聞きながら、土岐が金田民子の落合のマンションに行ったのを澤田が知らないことを察知した。民子が澤田の依頼人だとすれば、土岐の履歴には一銭の価値もない。
土岐は澤田の話を確認した。
「クライアントが評価しないというのはどうしてだ」
「・・・だって、お宅、廣川弘毅の事件を調査しているんでしょ?」
「それを知っているということは盗聴器か?・・・玄関脇の固定電話だな」
「・・・まあ、想像にお任せしますが・・・」
「いや、おれがこの足で盗聴器を調べに行ったら困るでしょ?」
「・・・それじゃ、自分で自分の首を絞めることになる」
「どうしてだ」
澤田は小ずるそうなイタチのような眼をさらに弓なりに細めて言う。
「・・・これから先、こちらの情報がおたくに提供できなくなるでしょ」
「いやあ、お互い様だ。・・・クライアントの利益に、・・・というのがこの業界の鉄則だ。固定電話に盗聴器が仕掛けられているのに、黙っていたら業務義務違反になる」
「そうかも知れないけどクライアントがすべての情報を提供しているとは限らない」
「盗聴器のことは黙っていよう。佐藤加奈子と金田義明の関係を先に言ってくれ」
澤田は再度、筋張った首を伸ばしてあたりを見回した。白眼が異様に大きい。黒目が点のように見える。ブレンドコーヒーが運ばれてきてウエイトレスの重そうな腰が立ち去るのを待っていた。
澤田は必要以上に小さな声で囁いた。聞き取りにくい。
「・・・あの二人はできている」
「男と女の関係ということか?」
「・・・そうなんだけどね、なかなか尻尾を出さない」
「五年間もか?」
「・・・いやあ、この調査は廣川弘毅が亡くなった直後からだ」
「だって、離婚訴訟は五年近くやってるんでしょ」
「五年は別居の期間。財産分与を巡って裁判を始めたのは去年から。民子が自己主張が強くて強欲で身勝手なことばかり言うもんだから裁判官を怒らせちゃって、だいぶ心証を悪くしたみたいで、どうしても客観的な証拠が必要だってんで興信所に依頼したというわけ」
「内縁関係ではあるが若い後妻と、義理の息子か、・・・あかの他人だから、よくある痴話ばなしではあるが、・・・で、ふたりは本当に男女関係なのか?」


