土岐は少し興奮し、震える指で枚数を数えた。百枚あった。同じ封筒に自殺を思いとどまらせることを目的とするNPOが寄付金集めに印刷したカードが入っていた。その薄いピンクの厚手のカードには、〈命を大切に〉という印刷された赤い文字があった。
土岐は興奮して震える指で、即座に海野に電話した。
「・・・はい、海野」
「土岐です。今朝、変なものが投函されていました」
「・・・なんだ?」
「一万円のバラ札が百枚、郵便受けに投げ込まれていました。その中に警告なのかどうか、〈命を大切に〉という印刷されたカードが入っていました。どういう意味だと思いますか?」
海野はしばらく考えている様子だった。呼吸音がかすかに聞こえてきた。
「・・・なるほど、そうきたか。警告と現金か・・・」
「どうします?拾得物として警察に届けますか?」
「・・・ばかな!投げ込んできたやつがのこのこと警察に申し出てくるか。そんなことが新聞ネタにでもなれば、それを読んだ投げ込んだやつが『土岐というバカ者は命を大切にしていない』と受け取るだろう。しばらくはお前を尾行するはずだ。お前を消すのは簡単だ。ラッシュアワーには電車に乗らないことだな。とくにホームの先頭に立たないことだ。後ろから押せば、廣川弘毅がそうだったように完全犯罪が可能だ。人がホームに転落すれば現場は騒然となる。そこにいる通勤客の目は転落現場にくぎ付けになる。犯人は騒ぎに紛れてゆっくりと現場を離れる。走って逃げれば目撃者を作ることになる。そっと歩いてゆけば目撃者は出てこない。・・・どっちにしても、古い札とカードの文字だけじゃ、長瀬と玉井まで辿ることはできないだろう」
「じゃあ、どうすんですか?受け取れば共犯になるし、返せば何をされるか分からない」
「・・・マスコミにリークしないだけなら共犯にはならないだろう。百万円は口止め料ということだ。あんたにしちゃあ大金かも知れんが、奴らにしてみれば小遣い銭だ。あんたも足元を見られたもんだ。自宅事務所が蒲田の印刷工場の二階じゃな。百万程度で十分だということだ。とりあえず、預かっておけ。俺が受け取れば収賄だが、・・・共同事務所の設立資金とするのはどうだ?」
「分かりました」
土岐は興奮して震える指で、即座に海野に電話した。
「・・・はい、海野」
「土岐です。今朝、変なものが投函されていました」
「・・・なんだ?」
「一万円のバラ札が百枚、郵便受けに投げ込まれていました。その中に警告なのかどうか、〈命を大切に〉という印刷されたカードが入っていました。どういう意味だと思いますか?」
海野はしばらく考えている様子だった。呼吸音がかすかに聞こえてきた。
「・・・なるほど、そうきたか。警告と現金か・・・」
「どうします?拾得物として警察に届けますか?」
「・・・ばかな!投げ込んできたやつがのこのこと警察に申し出てくるか。そんなことが新聞ネタにでもなれば、それを読んだ投げ込んだやつが『土岐というバカ者は命を大切にしていない』と受け取るだろう。しばらくはお前を尾行するはずだ。お前を消すのは簡単だ。ラッシュアワーには電車に乗らないことだな。とくにホームの先頭に立たないことだ。後ろから押せば、廣川弘毅がそうだったように完全犯罪が可能だ。人がホームに転落すれば現場は騒然となる。そこにいる通勤客の目は転落現場にくぎ付けになる。犯人は騒ぎに紛れてゆっくりと現場を離れる。走って逃げれば目撃者を作ることになる。そっと歩いてゆけば目撃者は出てこない。・・・どっちにしても、古い札とカードの文字だけじゃ、長瀬と玉井まで辿ることはできないだろう」
「じゃあ、どうすんですか?受け取れば共犯になるし、返せば何をされるか分からない」
「・・・マスコミにリークしないだけなら共犯にはならないだろう。百万円は口止め料ということだ。あんたにしちゃあ大金かも知れんが、奴らにしてみれば小遣い銭だ。あんたも足元を見られたもんだ。自宅事務所が蒲田の印刷工場の二階じゃな。百万程度で十分だということだ。とりあえず、預かっておけ。俺が受け取れば収賄だが、・・・共同事務所の設立資金とするのはどうだ?」
「分かりました」


