「・・・ばれたら、問題でした。実は、私の大学のゼミの先生が作問委員だったんですが、極秘に採点と作問を依頼されていました。この業界は、受験生を何人合格させたかが勝負で、私は当時、この業界のトップ講師でした。しかし、本番と酷似した答練問題を出題していて、合格率を上げることはできたのですが、いつばれるか不安になって、いまの城田理事長が『お前をトップ講師として売り出してやる』と誘いを掛けて来たんですが、怖くなって、切りのいいところでやめようと考えていました。そんなときに廣川さんが証券アナリスト講座の財務分析を受講されていて、・・・誰からか、裏社会の顔役らしいというような噂話を聞かされて、・・・わたしが、代理の出題と採点をしていることがばれて、恐喝にきたのではないかと戦々恐々でした」
「そうではなかったんですね」
そこに女事務員がお茶を持ってきた。胡散臭そうな目で土岐を見る。
「・・・だからすぐ、やめました」
「その時、最初の校歌を作曲した女性があなたに廣川弘毅の紹介を求めてきたはずですが、・・・」
「・・・相田さんですか?」
「ええ」
「・・・彼女、わたしのタイプだったんで、よく覚えています」
「同じ高校だったんですよね」
「・・・いえ、私は男子校だから、・・・それに彼女は女子高だったんじゃないですかね。誰かから聞きましたけど・・・」
「それじゃ、小中学校か何かの同級生だったんですか?」
「・・・いいえ、あんな美人が同級生だったら、とっくに声をかけていましたよ」
「と、いうことは、城田簿記学校以前は面識はなかったんですか?」
「・・・ないです。城田簿記学校をやめるときも、後ろ髪をひかれる思いでした」
それを聞いて土岐は、税理士事務所を後にした。相田貞子が篠原正弘と高校の同級生だったというウソをついた理由が分からなかった。
その日の午後になってようやくアルコールが体からぬけた。蒲田の事務所に戻ってから佐藤加奈子にどういう報告書を書くべきか、思案を始めることにした。
午後二時すぎに、鍵をドアのカギ穴に差し込みながら事務所のドアの郵便受けをチェックした。チラシしか入っていなかった。チラシの中に郵便物でない茶封筒がまぎれていた。封もされていないので、中身をすぐ確認すると使い古したばらばらの一万円札がはいっていた。
「そうではなかったんですね」
そこに女事務員がお茶を持ってきた。胡散臭そうな目で土岐を見る。
「・・・だからすぐ、やめました」
「その時、最初の校歌を作曲した女性があなたに廣川弘毅の紹介を求めてきたはずですが、・・・」
「・・・相田さんですか?」
「ええ」
「・・・彼女、わたしのタイプだったんで、よく覚えています」
「同じ高校だったんですよね」
「・・・いえ、私は男子校だから、・・・それに彼女は女子高だったんじゃないですかね。誰かから聞きましたけど・・・」
「それじゃ、小中学校か何かの同級生だったんですか?」
「・・・いいえ、あんな美人が同級生だったら、とっくに声をかけていましたよ」
「と、いうことは、城田簿記学校以前は面識はなかったんですか?」
「・・・ないです。城田簿記学校をやめるときも、後ろ髪をひかれる思いでした」
それを聞いて土岐は、税理士事務所を後にした。相田貞子が篠原正弘と高校の同級生だったというウソをついた理由が分からなかった。
その日の午後になってようやくアルコールが体からぬけた。蒲田の事務所に戻ってから佐藤加奈子にどういう報告書を書くべきか、思案を始めることにした。
午後二時すぎに、鍵をドアのカギ穴に差し込みながら事務所のドアの郵便受けをチェックした。チラシしか入っていなかった。チラシの中に郵便物でない茶封筒がまぎれていた。封もされていないので、中身をすぐ確認すると使い古したばらばらの一万円札がはいっていた。


