法蔵飛魂

れ育った時、同じ状況に遭遇して、同じ犯罪を犯さなかったと言い切れる根拠があるのか』と思い続けてきた。だからと言って、金井泰三が実行犯であるという確たる証拠を探し出そうとしないおれの行動が正しいことだとは、これっぽちも思っていない」
 その晩、土岐は生ビール三杯を立て続けに飲んだ。それ以上、アルコールを追加注文できないのが〈株都〉の店舗ルールなので、仕方なくその店を出た。飲み足りない気分だったが、海野はハシゴをしないと言う。家に帰りたがっていた。
 土岐は店の前で海野と別れ、東京駅まで歩き、途中居酒屋を探したが、土曜日ということもあって、開店している店は見当たらなかった。残念でもあったが、無駄使いしないで済んだという安堵感もあった。仕方なく、蒲田駅前のコンビニエンス・ストアで裂きイカとポテトチップスをつまみ用に買い、ペットボトル入りの安い焼酎とコーラを買い込んで、三十五度の焼酎をコーラの炭酸で割って痛飲した。記憶が途切れて、いつ寝たのか分からなかった。
 
調査報告完了(十月十一日 月曜日)
 
 二日酔いで、翌日の日曜日は一日中寝込んでいた。その翌日の月曜日の朝になって、メールチェックすると、送信者が西川というメールがあった。
@土岐明様。いつもお世話になっております。城田簿記学校の西川です。先日お問い合わせの廣川弘毅さんを指導していた担任の教員ですが、篠原正弘という者です。かなり前に弊校を退職しましたが、城田簿記学校のOB組織に加入しており、現在、池袋のほうで、税理士事務所を開業しております。電話番号を記載しますので、お問い合わせください@
 さっそく、土岐は記載されている電話番号にかけてみた。呼び出し音二つで女の声が出てきた。
「・・・はい、篠原税理士事務所です」
「こちら、城田簿記学校の西川さんの紹介で、おかけしております」
「・・・はあ・・・」
 城田簿記学校は知っていても、西川は知らない声音だ。
「昼頃にでも、篠原さんに、ちょっと、お会いできればと思うのですが・・・」
「・・・昼までには帰ってきますので・・・でも、篠原に伺わせてもいいのですが・・・」
 税務業務の依頼ではないので、呼びつけるのは気が引ける。
「いえ、池袋方面に行くついでがありますので・・・昼ごろ伺います。土岐と申します」