法蔵飛魂

「それじゃなぜ、無縁仏として善導寺に預けて、法蔵寺に連絡しなかったんですか」
「・・・やつは、身寄りはいないといっていた。かりに誰かが殺害したにしても、六十年以上も前の話だ。しかも、刑法ではなく、軍法の対象となるべきものだ。だが、日本海軍はすでに解体している」
「・・・それは承知しています。真実をお話し願えないのであれば、こちらの土岐さん経由で、マスコミにリークして、お話を引き出すという方法もあります」
と海野が口をはさんだ。
「・・・それは、名誉棄損になるぞ」
「真実であれば、名誉棄損にはならないでしょう。かりに、名誉棄損で告訴されるということであれば、裁判を通じて真実が明らかになるでしょう」
と土岐が昂然と主張すると、長瀬はナイトガウンのポケットにしまった土岐の名刺を取り出して見た。確認している。それからおもむろに細かい縦皺の入りかけてきた口を開いた。