「・・・ばかな。それは憲法上あり得ない。新法や改正法は過去には遡及して適用しないのが原則だ。過去の殺人にも及ぶと言っているのは、まだ時効を迎えていない事案についてのみだ。それだって、まだ解釈が分かれている。改正法を適用して裁判になれば、間違いなく弁護士は控訴審でそれを持ち出すはずだ」
海野がしたり顔でソファーに座り直して深く腰掛けた。
「・・・良くご存じで、憲法三十九条の事後法・遡及処罰の禁止の原則に反するというわけですね」
「・・・そうだ」
と傲然と長瀬が言う。
「・・・しかし、憲法三十九条は『実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない』と言っているのであって、時効前の殺人は適法であるわけもないし、裁判が行われていないから無罪であるわけでもない」
「・・・そんなことはどうでもいいじゃないか。廣川弘毅とは関係のない話だ」
「・・・まあそうです。どうでもいいことです。じゃあ、マスコミにリークするというのはいかがですか?」
「・・・言っている意味が良くわからない。所轄の警察が、すでに処理した事案について、『廣川弘毅の自殺の処理が誤りで、ほんとうは他殺だった』と記者クラブにリークすることはないだろう」
「・・・もちろんです。でも、この土岐さんは民間調査機関の立場でリークできます」
長瀬が小さくなって畏まっている土岐を睨みつけた。
「・・・だからどうしろと言うんだ?カネか?カネを要求すれば、恐喝になる。二人とも、わたしが告発すれば逮捕される」
海野が右手のひらを自分の鼻先で激しく左右に振った。
「・・・とんでもない。カネなんか要求しないですよ。ただ、真実が知りたいだけで・・・」
「・・・だから、知らないと言っている」
「三田法蔵の件はどうです?なぜ彼を殺害したんですか?」
と土岐が問うと長瀬は不意を衝かれたように目をむいた。
「・・・あれは、事故だ」
「事故であるとしても、その死をなぜ特攻死にしたんですか?」
と土岐が長瀬を追及するような口吻で訊いた。
「・・・そんなことは知らん」
と長瀬は不服そうに、土岐を威圧するように言う。
「廣川弘毅が法蔵寺で、特攻死だと嘘をついています」
と土岐は長瀬の威圧にあらがうように言う。
「・・・勝手に言ったことだろう」
海野がしたり顔でソファーに座り直して深く腰掛けた。
「・・・良くご存じで、憲法三十九条の事後法・遡及処罰の禁止の原則に反するというわけですね」
「・・・そうだ」
と傲然と長瀬が言う。
「・・・しかし、憲法三十九条は『実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない』と言っているのであって、時効前の殺人は適法であるわけもないし、裁判が行われていないから無罪であるわけでもない」
「・・・そんなことはどうでもいいじゃないか。廣川弘毅とは関係のない話だ」
「・・・まあそうです。どうでもいいことです。じゃあ、マスコミにリークするというのはいかがですか?」
「・・・言っている意味が良くわからない。所轄の警察が、すでに処理した事案について、『廣川弘毅の自殺の処理が誤りで、ほんとうは他殺だった』と記者クラブにリークすることはないだろう」
「・・・もちろんです。でも、この土岐さんは民間調査機関の立場でリークできます」
長瀬が小さくなって畏まっている土岐を睨みつけた。
「・・・だからどうしろと言うんだ?カネか?カネを要求すれば、恐喝になる。二人とも、わたしが告発すれば逮捕される」
海野が右手のひらを自分の鼻先で激しく左右に振った。
「・・・とんでもない。カネなんか要求しないですよ。ただ、真実が知りたいだけで・・・」
「・・・だから、知らないと言っている」
「三田法蔵の件はどうです?なぜ彼を殺害したんですか?」
と土岐が問うと長瀬は不意を衝かれたように目をむいた。
「・・・あれは、事故だ」
「事故であるとしても、その死をなぜ特攻死にしたんですか?」
と土岐が長瀬を追及するような口吻で訊いた。
「・・・そんなことは知らん」
と長瀬は不服そうに、土岐を威圧するように言う。
「廣川弘毅が法蔵寺で、特攻死だと嘘をついています」
と土岐は長瀬の威圧にあらがうように言う。
「・・・勝手に言ったことだろう」


