土岐は古いエレベーターを降りて、海野に従った。ビルを見上げると、八階の電気が一か所だけぼんやりと付いていた。海野の読みが正しければ、あのブラインドの隙間から、玉井が二人の行方を追っている筈だ。
海野は上から見やすいように歩道を車道寄りに歩いている。
「・・・たぶん、金井泰三か、その仲間のような奴が、おれたちを尾行するはずだ。尾行させてやろう。後ろを振り向くなよ」
土岐は黙って海野の脇を歩いた。
週末の大手町はゴーストタウンのようだ。東京の中心部であるのは平日だけだ。週末は人がほとんどいない。大手町駅まですれ違う人影がなかった。
地下鉄東西線の大手町駅の改札口脇で切符を買いながら、海野が言う。
「・・・歩いても、大した距離ではないが、それでも歩くとなると三十分はかかるだろう」
茅場町で日比谷線に乗り換えて次の八丁堀に着いたのは七時前だった。駅を出て、東京湾方面に歩いて行くと、ひときわ目立つ高層マンションがあった。周囲に場違いなほどこんもりとしたLED電飾内臓の植込みがあり、一階全体が煌々とした照明に照らし出されて、ホテルのロビーのようになっている。エントランスの自動扉を入ると、管理人兼警備員の受付があった。
海野が窓口を覗き込むようにして申し出た。
「・・・十七階の4号室の長瀬さんをおねがいします」
そう言いながら警察手帳を見せていた。
「・・・ご訪問ですか?」
「・・・そうです」
「・・・お名前は?」
「・・・茅場署の海野と言います」
と言いながら、警察手帳を見せる。
「・・・ご用件は?」
「・・・内閣府賞勲局の依頼できました」
警備員は聞き取れない。
「・・・内閣府の?」
海野は繰り返す。
「・・・内閣府、賞、勲、局です」
「・・・少々お待ちください」
と言って、警備員は17階の4号室に電話をかけ、海野の用件を復唱する。
しばらく、やりとりがあって、
「・・・どうぞ、お会いになるそうです」
そう言うと、エレベーターホールへの扉が開いた。黒い大理石が一面に埋め込まれていた。間接照明で、足元と天井だけが明るい。高級クラブの入口のようだと土岐は思った。
土岐と海野の姿が鏡のような床や壁に亡霊のように映し出されている。
海野はエレベーターの上昇ボタンを押した。
海野は上から見やすいように歩道を車道寄りに歩いている。
「・・・たぶん、金井泰三か、その仲間のような奴が、おれたちを尾行するはずだ。尾行させてやろう。後ろを振り向くなよ」
土岐は黙って海野の脇を歩いた。
週末の大手町はゴーストタウンのようだ。東京の中心部であるのは平日だけだ。週末は人がほとんどいない。大手町駅まですれ違う人影がなかった。
地下鉄東西線の大手町駅の改札口脇で切符を買いながら、海野が言う。
「・・・歩いても、大した距離ではないが、それでも歩くとなると三十分はかかるだろう」
茅場町で日比谷線に乗り換えて次の八丁堀に着いたのは七時前だった。駅を出て、東京湾方面に歩いて行くと、ひときわ目立つ高層マンションがあった。周囲に場違いなほどこんもりとしたLED電飾内臓の植込みがあり、一階全体が煌々とした照明に照らし出されて、ホテルのロビーのようになっている。エントランスの自動扉を入ると、管理人兼警備員の受付があった。
海野が窓口を覗き込むようにして申し出た。
「・・・十七階の4号室の長瀬さんをおねがいします」
そう言いながら警察手帳を見せていた。
「・・・ご訪問ですか?」
「・・・そうです」
「・・・お名前は?」
「・・・茅場署の海野と言います」
と言いながら、警察手帳を見せる。
「・・・ご用件は?」
「・・・内閣府賞勲局の依頼できました」
警備員は聞き取れない。
「・・・内閣府の?」
海野は繰り返す。
「・・・内閣府、賞、勲、局です」
「・・・少々お待ちください」
と言って、警備員は17階の4号室に電話をかけ、海野の用件を復唱する。
しばらく、やりとりがあって、
「・・・どうぞ、お会いになるそうです」
そう言うと、エレベーターホールへの扉が開いた。黒い大理石が一面に埋め込まれていた。間接照明で、足元と天井だけが明るい。高級クラブの入口のようだと土岐は思った。
土岐と海野の姿が鏡のような床や壁に亡霊のように映し出されている。
海野はエレベーターの上昇ボタンを押した。


