を割り当てられ、わりを食った。一番分け前の多かったのが、馬田重史で、馬田は海軍兵学校で学んだ英語力を生かし、八紘物産の中興の祖となった。社長就任当時、政府からさまざまな諮問委員会などの委員就任を打診されたが、ことごとく断った。このことは、新聞に連載した馬田の自伝によれば、『在野の経営者として政府に警鐘を鳴らす意味からも政府とは一線を画す』
とジャーナリズムからは称賛されたようだが、おれの考えでは、馬田は叙勲の対象となることを避けたんだ。実際、経済団体の中でも重要な役職に就くことをしなかった。政府の各種委員会の委員ともなれば、いずれ政府の方で叙勲か褒章の対象としてくれる。そうなれば、身辺調査が行われる。隠匿物資の横領はとっくに時効だし、戦後のどさくさにまぎれたもので、戦後名を成した多くの実業家が何らかの形で、それと似たような危ない橋を渡っている。馬田が恐れたのは廣川との関係だ。馬田は海外賄賂の裏金作りのために廣川を利用した。八紘物産の取引先や関連会社のインサイダー情報を廣川に流し、廣川に表立たない形で企業から資金を集めさせた。長瀬も監査法人の代表社員の立場で入手したインサイダー情報を情報源がばれないように廣川に流し、廣川に儲けさせた。廣川がほかの総会屋のように、名前を売ったうえで、株主総会に出席し、資金を集めるという表立った活動をせずに、賛助金や広告協力費を集金できたのはこのためだ。船井はそのカネで衆議院議員に立候補し、票を買収し、当選したものの、もともと政治的な野心も理想もなかったので、建築土木利権でカネを儲けることに方針を転換して、一九五八年の総選挙で落選したのを機に、政界人脈を利用して、口利き利権に奔走し、そうした利権に群がって来たゼネコンの賄賂情報を廣川に流し、廣川が総会屋活動をしないでゼネコンから資金を調達する便宜をはかった。こうしたカネのなる木もバブル崩壊と商法改正による総会屋取締強化でしりすぼみとなった。すべては時効の壁の向こうの話だ。そこで玉井さん、あんたの役割は取り締まる側の情報を廣川に流すことだった」
うつむいて聞いていた玉井要蔵が顔をあげて、海野を見上げた。
海野は話を続ける。
とジャーナリズムからは称賛されたようだが、おれの考えでは、馬田は叙勲の対象となることを避けたんだ。実際、経済団体の中でも重要な役職に就くことをしなかった。政府の各種委員会の委員ともなれば、いずれ政府の方で叙勲か褒章の対象としてくれる。そうなれば、身辺調査が行われる。隠匿物資の横領はとっくに時効だし、戦後のどさくさにまぎれたもので、戦後名を成した多くの実業家が何らかの形で、それと似たような危ない橋を渡っている。馬田が恐れたのは廣川との関係だ。馬田は海外賄賂の裏金作りのために廣川を利用した。八紘物産の取引先や関連会社のインサイダー情報を廣川に流し、廣川に表立たない形で企業から資金を集めさせた。長瀬も監査法人の代表社員の立場で入手したインサイダー情報を情報源がばれないように廣川に流し、廣川に儲けさせた。廣川がほかの総会屋のように、名前を売ったうえで、株主総会に出席し、資金を集めるという表立った活動をせずに、賛助金や広告協力費を集金できたのはこのためだ。船井はそのカネで衆議院議員に立候補し、票を買収し、当選したものの、もともと政治的な野心も理想もなかったので、建築土木利権でカネを儲けることに方針を転換して、一九五八年の総選挙で落選したのを機に、政界人脈を利用して、口利き利権に奔走し、そうした利権に群がって来たゼネコンの賄賂情報を廣川に流し、廣川が総会屋活動をしないでゼネコンから資金を調達する便宜をはかった。こうしたカネのなる木もバブル崩壊と商法改正による総会屋取締強化でしりすぼみとなった。すべては時効の壁の向こうの話だ。そこで玉井さん、あんたの役割は取り締まる側の情報を廣川に流すことだった」
うつむいて聞いていた玉井要蔵が顔をあげて、海野を見上げた。
海野は話を続ける。


