次に土岐は〈江東区テニス協会〉を検索した。黄色い背景の素人っぽいセンスのないベタのホームページが最初に出てきた。連絡先の携帯電話番号があったので、さっそく電話してみた。かなり待たされた。しばらくして伝言モードに切り替わった。一旦、携帯電話を切り、再ダイヤルした。今度は、すぐ出てきた。聞き取りにくい声音だった。屋外らしい。ポーン、ポーンというテニスボールを打つ乾いた音と嬌声が聞こえてくる。江東区のどこかのテニスコートでテニスをしているようだ。晴天ののどかな雰囲気がテニスボールを打つ音から伝わってくる。
「・・・すみません。ペアのかたの電話番号なら分かるんですが・・・」
 土岐に不信感を抱いていることが声のニュアンスで伝わってきた。土岐はとっさにパソコンの検索画面を見た。見城仁美のパートナーは、双葉智子になっていた。
「ああ、双葉さんですか・・・」
「・・・じゃあ、電話番号、言いますけど、・・・いいですか?」
 土岐はパソコン脇に広げた手帳に双葉智子の電話番号を書きとめた。念のため復唱して、電話を切った。その指ですぐ、双葉智子に電話を掛けた。呼び出し音、三回で出てきた。
誰かを待ち受けていたような声を出す。すぐ詮索するような声音に変わる。
 土岐は見城仁美の電話番号をメモした。礼を言って切った。その指で、土岐は見城仁美の携帯電話に掛けてみた。十回ほど呼び出し音がして、留守番電話に切り替わった。土岐は声色を変えてメッセージを入れた。
「茅場署の海野と申します。非常に重要な連絡がありますので、ご連絡をください」
 見城仁美の携帯番号を土岐の携帯電話に登録した。しばらくして着信音が鳴り響いた。送信者名を見ると、〈見城仁美〉だった。若い女の甲高い声だった。
「見城仁美さんですね。いま、どちらですか?」
「やっぱりそうですか。海野刑事さんじゃないんですね。なんか、声が違うと思いました」
と言うなり切れた。土岐は舌打ちしながら掛けなおした。呼び出し音はするが、出てこない。そのうち、留守番電話に切り替わったが、それもメッセージを入れる前にすぐ切れた。
 朝食とも昼食ともつかない食事を終え、鍋を洗い、ふたたびパソコンの前に座った。すこしキーの高いしゃべりを試してから、もう一度、見城仁美に電話した。今度は出てきた。