海野は内ポケットから、例の似顔絵を出して、テーブルの上に広げた。玉井はおもむろに背をかがめ、眼鏡をはずして、似顔絵に見入った。それからぽつりと言う。
「・・・なに、これ?」
「・・・ご存じでしょ?金井泰三ですよ」
海野にそう言われて、土岐は田園調布の駅前の喫茶店で澤田に見せられたゴルフ場での金井泰三、金田民子、金田義明のスリーショットのデジタル画像を思い出した。土岐の記憶にある画像の中の金井泰三と似顔絵が重なり合った。
玉井はもう一度似顔絵を胡散臭そうに見直す。
「・・・そう言われれば、そう見えないこともないが、・・・こんなもの、証拠能力ないよ。・・・これがどうしたの?」
「・・・目撃されているんです。廣川弘毅の殺害現場で・・・」
「・・・殺害現場?・・・あれは、自殺で落着しているんだろ?」
「・・・まあ、署内的にはそう処理されていますが、民事では、殺人ということになるかもしれません」
「・・・佐藤加奈子か?」
と玉井は民事で訴訟を起こそうとしている人物の名前を言った。海野が答える。
「・・・そうです」
玉井は両手を頭の後ろで組み、ソファーにもたれて天井を見る。絡めた太い指がいまにも外れそうだ。白い鼻毛がよく見える。
「・・・民事でも、USライフに勝てないだろう。いや、法廷外の圧力で、勝たせてもらえないだろう。まあ、佐藤加奈子も、提訴すれば、いずれ提訴しなかった方がよかったと思い知るはずだ」
土岐が口をはさんだ。
「四十年前、廣川弘毅が総会屋活動の表舞台からひっこんだのはなぜですか?」
玉井が声の方を向いて目を剥いた。しょぼついていた目が大きく見開かれた。
「・・・あいつは自力では何もしていなかったんだ。財務諸表ぐらいは勉強したようだったが、インサイダー情報はもらっていた。やつが派手な活躍をしてしょっぴかれると、当然情報を提供していた方にも類が及ぶ。それを恐れて、やつに表舞台から手を引かせた。そのかわり、たんまりとはいかないが、それなりの金づるがやつに提供された。雑誌広告がメインだった。一社当たりの金額はたいしたことはないが、上場企業百社ぐらいを紹介した」
「長瀬啓志と船井肇と馬田重史が紹介したんですか?」
「・・・それを知ってどうする。インサイダー取引は、とっくに時効だし、雑誌広告はまっとうな商取引だ」
「・・・なに、これ?」
「・・・ご存じでしょ?金井泰三ですよ」
海野にそう言われて、土岐は田園調布の駅前の喫茶店で澤田に見せられたゴルフ場での金井泰三、金田民子、金田義明のスリーショットのデジタル画像を思い出した。土岐の記憶にある画像の中の金井泰三と似顔絵が重なり合った。
玉井はもう一度似顔絵を胡散臭そうに見直す。
「・・・そう言われれば、そう見えないこともないが、・・・こんなもの、証拠能力ないよ。・・・これがどうしたの?」
「・・・目撃されているんです。廣川弘毅の殺害現場で・・・」
「・・・殺害現場?・・・あれは、自殺で落着しているんだろ?」
「・・・まあ、署内的にはそう処理されていますが、民事では、殺人ということになるかもしれません」
「・・・佐藤加奈子か?」
と玉井は民事で訴訟を起こそうとしている人物の名前を言った。海野が答える。
「・・・そうです」
玉井は両手を頭の後ろで組み、ソファーにもたれて天井を見る。絡めた太い指がいまにも外れそうだ。白い鼻毛がよく見える。
「・・・民事でも、USライフに勝てないだろう。いや、法廷外の圧力で、勝たせてもらえないだろう。まあ、佐藤加奈子も、提訴すれば、いずれ提訴しなかった方がよかったと思い知るはずだ」
土岐が口をはさんだ。
「四十年前、廣川弘毅が総会屋活動の表舞台からひっこんだのはなぜですか?」
玉井が声の方を向いて目を剥いた。しょぼついていた目が大きく見開かれた。
「・・・あいつは自力では何もしていなかったんだ。財務諸表ぐらいは勉強したようだったが、インサイダー情報はもらっていた。やつが派手な活躍をしてしょっぴかれると、当然情報を提供していた方にも類が及ぶ。それを恐れて、やつに表舞台から手を引かせた。そのかわり、たんまりとはいかないが、それなりの金づるがやつに提供された。雑誌広告がメインだった。一社当たりの金額はたいしたことはないが、上場企業百社ぐらいを紹介した」
「長瀬啓志と船井肇と馬田重史が紹介したんですか?」
「・・・それを知ってどうする。インサイダー取引は、とっくに時効だし、雑誌広告はまっとうな商取引だ」


