西船橋で東西線に乗り換え、大手町まで土岐は頭痛に悩まされた。二日酔いがまだ完全には抜けきっていなかった。大手町に着いたのは五時ちょうどだった。東京の中心だが、土曜日の人影はまばらだ。船井ビルまで五分あれば十分だった。黄昏時の大手町のビル街の狭い路地に海野がたばこをくゆらせながら待っていた。
「・・・おう、ちょうど、五時五分だ」
「今日は、なんですか?」
「・・・ちょっと、八階の玉井企画まで付き合ってくれ。・・・例の調査報告書、読ませてもらった。素人にしてはよく調べてある。まあ、民間で、しかもたった一人じゃ、あれが限界だろうな。ここんとこ、つまらん捜査に駆り出されて、ようやく、おととい解放されたばかりだ。お前さんの調査もあって、この事件の全体像がようやくおぼろげながら見えてきた。・・・今晩、だいたい決着がつく」
二人で、古いエレベーターに乗った。天井が低い。動いているのかどうかよくわからないほど遅い。ワイヤーのかすかな軋み音で、動いているのがかろうじて分かる。小刻みに左右に揺れている。エレベーターは八階で、すこしリバウンドしながら停止した。廊下は真っ暗だった。神田駅方向の遥か遠くのネオンサインが、上空数千メートルを夜間飛行する飛行機のライトのように小さく点滅しているのが、廊下の窓からかすかに見える。
海野が舌打ちした。
「・・・まだ来ていないか」
「玉井要蔵ですか?」
「・・・そうだ」
暗くて海野の表情が分からない。腹の底から出てくる声がなんとなく不気味だ。
土岐はじっと黙っていられないような不安な思いに駆られた。
「今日は土曜日で休みなんじゃないですか?」
「・・・呼び出した」
「どういう名目で?」
「・・・任意の事情聴取だ」
「でも、廣川弘毅の件は自殺で処理されたんじゃないですか?」
「・・・それはそれ、・・・再捜査という名目だ。『参考までに』と言ってある。やつも、こっちの手の内を知りたいはずだ」
「わたしが同席していて、いいんですか?」
「・・・同僚、ということでお願いする。刑事は原則として二人で行動することになっている。脇にいてくれるだけでいい。尋問はおれがやる」
「こんなところで事情聴取するんですか?」
「・・・おう、ちょうど、五時五分だ」
「今日は、なんですか?」
「・・・ちょっと、八階の玉井企画まで付き合ってくれ。・・・例の調査報告書、読ませてもらった。素人にしてはよく調べてある。まあ、民間で、しかもたった一人じゃ、あれが限界だろうな。ここんとこ、つまらん捜査に駆り出されて、ようやく、おととい解放されたばかりだ。お前さんの調査もあって、この事件の全体像がようやくおぼろげながら見えてきた。・・・今晩、だいたい決着がつく」
二人で、古いエレベーターに乗った。天井が低い。動いているのかどうかよくわからないほど遅い。ワイヤーのかすかな軋み音で、動いているのがかろうじて分かる。小刻みに左右に揺れている。エレベーターは八階で、すこしリバウンドしながら停止した。廊下は真っ暗だった。神田駅方向の遥か遠くのネオンサインが、上空数千メートルを夜間飛行する飛行機のライトのように小さく点滅しているのが、廊下の窓からかすかに見える。
海野が舌打ちした。
「・・・まだ来ていないか」
「玉井要蔵ですか?」
「・・・そうだ」
暗くて海野の表情が分からない。腹の底から出てくる声がなんとなく不気味だ。
土岐はじっと黙っていられないような不安な思いに駆られた。
「今日は土曜日で休みなんじゃないですか?」
「・・・呼び出した」
「どういう名目で?」
「・・・任意の事情聴取だ」
「でも、廣川弘毅の件は自殺で処理されたんじゃないですか?」
「・・・それはそれ、・・・再捜査という名目だ。『参考までに』と言ってある。やつも、こっちの手の内を知りたいはずだ」
「わたしが同席していて、いいんですか?」
「・・・同僚、ということでお願いする。刑事は原則として二人で行動することになっている。脇にいてくれるだけでいい。尋問はおれがやる」
「こんなところで事情聴取するんですか?」


