「ぼくには何も分からない。あなたがこれまで生きてきた人生は、あなただけのものだ。本当のことはあなた以外、誰にもわからない。しかし、これからあなたが生きて行く人生はあなただけのものではないかも知れない。そばに誰かいれば共有することができる。喜びは二倍に、悲しみは半分になる。子供が二人できれば、喜びは四倍に、悲しみは四分の一になる。過去はもう終わったことだ。振り返って悲しんだり、怒ったりしたって変えることはできない。未来に掛けるしかないじゃないか。・・・裁判で本当のことを証言してくれることを祈っている。ぼくが依頼人から受け取る成功報酬はあなたにあげよう。お母さんの入居費用にはとても足りないかも知れないが、あなたの勇気と将来にぼくはかけたい。それに、あなたのお母さんが廣川弘毅の娘であることがDNA鑑定で立証されれば、かなりの額の遺産が相続できる。私生児にされたことで辛い人生を味わったあなたのお母さんにはその遺産を受け取る権利がある。廣川弘毅の遺族は抵抗するだろうが、DNA鑑定で親子であることが立証されれば、示談に持ち込むことができる。そうなるように、ぼくは全面的に協力するつもりだ」
サンルーム越しに部屋に入ってくる深まる秋の黄ばんだ陽光がほんのりと赤みを帯びてきた。仁美は背を向けたまま、戸惑うように間欠的に鼻水をすすりあげている。
サンルーム越しに部屋に入ってくる深まる秋の黄ばんだ陽光がほんのりと赤みを帯びてきた。仁美は背を向けたまま、戸惑うように間欠的に鼻水をすすりあげている。


