法蔵飛魂

と言いながら女将は手を突いて席を立った。それから、十分ぐらいして、髪も化粧も堅気風の老女が現れた。大島紬の着こなしと立ち居振る舞いは、素人には見えなかった。〈波屋〉の女将が紹介した。
「・・・隅屋さんの先代の徳子おかあさんです。お話は、玄関先で伝えておきました」
 土岐がさっそく質問した。
「中井和子さんと廣川弘毅氏のことについてお話しいただけますか?」
 徳子はあたりを見回し、主賓と見立てた宇多に軽く会釈して話し出した。