応諾する前に、銘々膳のコップをめがけて、女将がビール瓶の口を差し出してきた。最初に宇多、次に土岐の順で注いで回る。
「・・・市松姐さんは、もうすぐ来ますので・・・それに新内の勘太師匠と幇間の植吉さんにも声をかけました」
それを聞いて宇多は満足そうな笑みを見せた。土岐は名前を聞いただけで平均年齢が高そうなので、気分が少し暗くなった。
「さっき、こちらの予約をとる電話で、たしか、『かもめさんも出払っている』と言ってましたが、かもめさんというのは半玉さんのことですか?」
「・・・いいえ、アルバイトの女の子のことです。・・・だいたい女子大生が多いんですが・・・敷居を高くしているというわけではないんですが、きゃぴきゃぴしたキャバクラ感覚の子はお断りしているんですけど・・・」
しばらくして高齢の三人が料理とともに現れた。浅黄の羽織に三味線を持っているのが新内の勘太師匠、五分刈りで兵児帯にネルの着流しが幇間の植吉、地味目の加賀友禅で艶々の鬘の下に罅の入るほど白いファンデーションを塗りたくっているのが市松姐さんだとすぐ分かった。平均年齢は優に七十歳を超えているように見えた。
「・・・何か踊りましょうか?」
と市松が言う。その市松を見て宇多が土岐に耳打ちした。
「・・・おい、おい、化け物屋敷か?」
それを女将が聞きつけた。
「・・・いいえ、おばけは節分のときしかやりませんのよ」
宇多はばつが悪くなってごまかしの質問をした。
「・・・そのお化けってなんですか?」
「・・・仮装大会みたいなもの・・・お姐さんがほっかむりして髭を眉墨で描いて、おじさんになって、安来節を踊ったり・・・」
間髪を入れず、制限時間を気にしている土岐が言った。
「お三方に、先に話を伺えますか?」
それを宇多がコップを持つ手で制した。
「・・・まあ、まあ、かけつけ三杯で、とりあえず、ビールででも乾杯しましょう」
先刻、なにかを伝える際に、女将を、『おかあさん』と呼んでいた少女を呼びつけて、女将はコップを三つ持ってこさせた。芸人三人が土岐と宇多の前に正座し、コップを持った手に女将がビールを注いで行った。
「・・・折角来られたんだから、お得意の十八番でも見せていただきましょうか」
「・・・市松姐さんは、もうすぐ来ますので・・・それに新内の勘太師匠と幇間の植吉さんにも声をかけました」
それを聞いて宇多は満足そうな笑みを見せた。土岐は名前を聞いただけで平均年齢が高そうなので、気分が少し暗くなった。
「さっき、こちらの予約をとる電話で、たしか、『かもめさんも出払っている』と言ってましたが、かもめさんというのは半玉さんのことですか?」
「・・・いいえ、アルバイトの女の子のことです。・・・だいたい女子大生が多いんですが・・・敷居を高くしているというわけではないんですが、きゃぴきゃぴしたキャバクラ感覚の子はお断りしているんですけど・・・」
しばらくして高齢の三人が料理とともに現れた。浅黄の羽織に三味線を持っているのが新内の勘太師匠、五分刈りで兵児帯にネルの着流しが幇間の植吉、地味目の加賀友禅で艶々の鬘の下に罅の入るほど白いファンデーションを塗りたくっているのが市松姐さんだとすぐ分かった。平均年齢は優に七十歳を超えているように見えた。
「・・・何か踊りましょうか?」
と市松が言う。その市松を見て宇多が土岐に耳打ちした。
「・・・おい、おい、化け物屋敷か?」
それを女将が聞きつけた。
「・・・いいえ、おばけは節分のときしかやりませんのよ」
宇多はばつが悪くなってごまかしの質問をした。
「・・・そのお化けってなんですか?」
「・・・仮装大会みたいなもの・・・お姐さんがほっかむりして髭を眉墨で描いて、おじさんになって、安来節を踊ったり・・・」
間髪を入れず、制限時間を気にしている土岐が言った。
「お三方に、先に話を伺えますか?」
それを宇多がコップを持つ手で制した。
「・・・まあ、まあ、かけつけ三杯で、とりあえず、ビールででも乾杯しましょう」
先刻、なにかを伝える際に、女将を、『おかあさん』と呼んでいた少女を呼びつけて、女将はコップを三つ持ってこさせた。芸人三人が土岐と宇多の前に正座し、コップを持った手に女将がビールを注いで行った。
「・・・折角来られたんだから、お得意の十八番でも見せていただきましょうか」


