「・・・どういう理由でしょっぴくんだ。・・・長瀬啓志はただの公認会計士じゃないぞ。監査法人の代表社員をやっていた頃は日本を代表する一部上場企業と太いパイプを築きあげた。定年で個人事務所を開いてからは、政界の大物の税理業務を一手に引き受けている。なん社もの大企業の社外監査役もやっている。おそらく、元衆議院議員の船井肇や八紘物産相談役の馬田重史の口利きだろうと思うが・・・本当の権力を握っているやつらは表に出てこないんだ。おれにしたって、お前にしたって、やつらにしてみりゃ護摩の灰以下だ。しかも、最近紫綬褒章の推薦を受けている。推薦者は久邇頼道だ。しかも、賛同者は馬田重史と船井肇だ。これだけの大物が推薦したとなると、受章は間違いない。・・・この夏、内閣府賞勲局からの依頼で、形式的な身辺調査をした。・・・ばりばりの現役刑事はこんなガキの使いみたいな仕事はしないが、おれは定年間際の警部補だからな。まあ、相応な仕事ということなんだろう。・・・長瀬啓志の犯罪歴は駐車違反程度しかない。所轄の八丁堀の超高級マンションに数年前に引っ越してきて住んでいるが、初代のマンション管理組合理事長を務めたそうで、住民の評価は高い。悪い噂はまったくない」
「なにか突破口はないですか?」
「・・・見城仁美しかないだろう。それに同居している長田賢治。・・・おれはかみさんが居るから駄目だが、あんたチョンガーだろ。・・・見城仁美はおれの好みではないが、目撃者の男子学生がぞっこんみたいだったから、蓼喰う虫も好き好きってことかな。・・・あんた、仁美を攻めてみたらどうだ」
「そんな、他人ごとみたいに・・・仕事と情は別です」
「・・・いやあ、そういう意味じゃない。たまたま仕事と情が一致することもあるだろうという意味だ」
土岐はなんとなく割り切れない思いだった。仕事のために仕事以上に重要なものを犠牲にはできないという思いだった。海野は土岐に諭すように言う。
「なにか突破口はないですか?」
「・・・見城仁美しかないだろう。それに同居している長田賢治。・・・おれはかみさんが居るから駄目だが、あんたチョンガーだろ。・・・見城仁美はおれの好みではないが、目撃者の男子学生がぞっこんみたいだったから、蓼喰う虫も好き好きってことかな。・・・あんた、仁美を攻めてみたらどうだ」
「そんな、他人ごとみたいに・・・仕事と情は別です」
「・・・いやあ、そういう意味じゃない。たまたま仕事と情が一致することもあるだろうという意味だ」
土岐はなんとなく割り切れない思いだった。仕事のために仕事以上に重要なものを犠牲にはできないという思いだった。海野は土岐に諭すように言う。


