土岐はそこから上野駅に引き返した。途中、東京芸術大学の美術学部に立ち寄った。上野駅に向かって歩いて行くと、道路を挟んで左手が音楽学部、右手が美術学部になっている。土岐は美術学部の校門左手の第一守衛所を覗き込んだ。
「すみません。浦野先生はおられるでしょうか?」
「・・・浦野先生というと、彫刻科の助手の?」
「ええ、若い方です」
そう土岐が言うと、守衛が軽く笑った。守衛は内線をかけた。プッシュボタンを押しながら土岐に聞く。
「・・・そちらさん、お名前は?」
「土岐と言います」
「・・・トキさんというかたですが・・・そちらに伺ってよろしいですか・・・御用件は?」
と守衛は送話口を押さえて、制帽のつばの下から土岐に聞く。
「ちょっと、お尋ねしたいことがありまして・・・」
受話器を置いて、守衛が守衛所からよたよたと出てきた。校門右の建物を指差す。
「・・・この美術館の左隣が美術学部の中央棟で、その奥の、さらに左隣が、彫刻棟です」
と言って、守衛は守衛所に戻ろうとした。土岐は引きとめた。
「何階の何号室ですか?」
「・・・ああ、棟の前に出て、待っているそうです」
土岐は、浮世離れの空気が漂うキャンパス内をきょろきょろしながら歩いて行った。彫刻棟らしい建物の前に髭面でカーキの作業服を着た土方の若大将のような男が腰に両手をあてて立っていた。薄茶の頭髪がキューピーやビリケンの様な火炎形をしている。事務的なトーンで土岐に声をかけてきた。
「・・・トキさんですか?」
土岐は5メートル手前から頭を下げて近づいて行った。
「浦野先生ですか?はじめまして・・・」
「・・・御用件は?」
「お忙しい所すいません。大阪の坂本さんの紹介で伺いました」
「・・・大阪の坂本さん?」
「あれっ、御存じないですか?去年か一昨年、坂本さんの胸像を造られましたよね」
「・・・ビデオで造ったやつですかね」
「ビデオってなんですか?」
「・・・金井という人が、ビデオを持ち込んできて、それで胸像を造ってくれって、頼まれたことが、幾度か、ありますが・・・指導教授の紹介なんで、断れなくって・・・」
「幾度か?といいますと・・・」
「・・・もう、十ぐらい、いや、それ以上、制作していますが・・・ビデオを見ながらなんで、出来は良くないと思いますが・・・」
「いつ頃からですか?」
「すみません。浦野先生はおられるでしょうか?」
「・・・浦野先生というと、彫刻科の助手の?」
「ええ、若い方です」
そう土岐が言うと、守衛が軽く笑った。守衛は内線をかけた。プッシュボタンを押しながら土岐に聞く。
「・・・そちらさん、お名前は?」
「土岐と言います」
「・・・トキさんというかたですが・・・そちらに伺ってよろしいですか・・・御用件は?」
と守衛は送話口を押さえて、制帽のつばの下から土岐に聞く。
「ちょっと、お尋ねしたいことがありまして・・・」
受話器を置いて、守衛が守衛所からよたよたと出てきた。校門右の建物を指差す。
「・・・この美術館の左隣が美術学部の中央棟で、その奥の、さらに左隣が、彫刻棟です」
と言って、守衛は守衛所に戻ろうとした。土岐は引きとめた。
「何階の何号室ですか?」
「・・・ああ、棟の前に出て、待っているそうです」
土岐は、浮世離れの空気が漂うキャンパス内をきょろきょろしながら歩いて行った。彫刻棟らしい建物の前に髭面でカーキの作業服を着た土方の若大将のような男が腰に両手をあてて立っていた。薄茶の頭髪がキューピーやビリケンの様な火炎形をしている。事務的なトーンで土岐に声をかけてきた。
「・・・トキさんですか?」
土岐は5メートル手前から頭を下げて近づいて行った。
「浦野先生ですか?はじめまして・・・」
「・・・御用件は?」
「お忙しい所すいません。大阪の坂本さんの紹介で伺いました」
「・・・大阪の坂本さん?」
「あれっ、御存じないですか?去年か一昨年、坂本さんの胸像を造られましたよね」
「・・・ビデオで造ったやつですかね」
「ビデオってなんですか?」
「・・・金井という人が、ビデオを持ち込んできて、それで胸像を造ってくれって、頼まれたことが、幾度か、ありますが・・・指導教授の紹介なんで、断れなくって・・・」
「幾度か?といいますと・・・」
「・・・もう、十ぐらい、いや、それ以上、制作していますが・・・ビデオを見ながらなんで、出来は良くないと思いますが・・・」
「いつ頃からですか?」


