法蔵飛魂

 その帰り、地下鉄銀座線で新橋駅に戻り、山手線で有楽町、東京、神田、秋葉原、御徒町、上野、鶯谷、日暮里、西日暮里、田端、駒込を経て巣鴨駅に立ち寄った。善導寺で書き写した住所は、国道を挟んで巣鴨のとげぬき地蔵尊とは反対側の雑居ビルにあった。雑居ビルは一、二階が飲食店で三階が麻雀荘のテナントで埋まっていた。隣が一見するとビジネスホテルのようなラブホテルで、土岐はそこの受付の窓のすりガラスを叩いた。
「すいません」
 二三度叩いて、しばらくすると、すりガラスがスライドして、中から老婆が怪訝そうな顔を出した。
「・・・なんですか?」
「あのう、ちょっと、伺いたいんですか、隣の雑居ビルの住所に、中村貞江という人がいたと思うんですが、御存知ないですか?」
「・・・中村?」
「貞江さんです」
「・・・聞いたことがあるような気がするけど、・・・どっちにしても今はいないね」
「どなたか、知っていそうな人はいないですかね」
「・・・さあ」
と老婆は愛想がない。ラブホテルの管理人としては適任かもしれないが、土岐にとってはありがたくなかった。
 
 土岐は巣鴨駅から山手線で田端駅でおり、京浜東北線に乗り換えて、快速で上野、秋葉原、東京、浜松町、田町、品川、大井町、大森を経て、早々に蒲田の事務所に帰宅した。その日の昼は、事務所にこもって、調査内容の整理にあたった。あばら屋ではあっても、住み慣れた我が家で、くつろいだ気分になれた。しかし、土岐の頭の中は聞き取り情報が錯綜して混乱していた。最初に智恩寺関係でまとめてみた。                                  
 智恩寺関係では、長田賢治と長瀬啓志が存命で、長田が人間関係の中心にいる。存命の人間は枠で囲んでみた。