「・・・たぶん、近くの葬儀場だと思う。今でもあるかどうか分らんが、・・・でも、大八車で運んだんだから、香良洲の近くだと思うが・・・」
「焼骨はどうしたんでしょうか?」
「・・・その近くのお寺に預けたとかいうような話を聞いたことがある」
「焼場に運んだ同期生と教官はだれですか?」
「・・・同期生は、一人は京都の造り酒屋のせがれで、もう一人は印刷会社の御曹司だった。二人とも早稲田で、彼は慶応よりも早稲田と馬があったようだった。教官は、たしか、手先信号の・・・」
「長瀬中尉ですか?」
堀田は立ち止まって土岐の顔を見た。〈何で知っているのか〉という目つきだった。
「・・・そう、長瀬啓志中尉だ」
土岐と堀田は地下鉄駅の入り口で別れた。別れ際に土岐は名刺を渡した。土岐はその場で、香良洲に戻ることにした。高茶屋駅に着いたとき五時を過ぎていた。駅員に火葬場の所在を聞くと、香良洲から4キロばかりのところに市営の火葬場と葬儀場があると言う。
「善導寺という浄土真宗のお寺が近くにあります」
それを聞いて、土岐は駅前からタクシーに乗った。
タクシーは深まりつつある宵闇の中を善導寺に向かった。二十分ほどで、巨大な山門の前についた。
土岐はタクシーを降りると山門をくぐり、庫裡に向かった。山門から50メートルほど奥にアルミサッシの玄関が見えた。玄関右わきのインターフォンのボタンを押すと、短髪の若い男が出てきた。上下黒のジャージーを着ている。挨拶のあと土岐は聞いた。
「戦後、このお寺に預けられたお骨があると思うんですが・・・」
若い男は、二重瞼の目を大きく見開いた。
「・・・戦後って、太平洋戦争のあとで?」
「ええ」
若い男の短髪が驚きで逆立っている。土岐は深呼吸して話を続けた。
「この近くに、海軍の飛行基地があったと思うんですが・・・」
「・・・香良洲ですか」
若い男がほっとしたように、玄関の板の間に腰をかがめて立膝になった。土岐は男を少し見下ろした。
「昭和二十年八月十五日の終戦の頃、近くの火葬場で焼いた骨をこちらに預けたらしいんですが、まだ、こちらにあるんでしょうか?」
「・・・随分と古い話で、・・・記録は取ったと思うんですが、その記録がまだあるかどうか、・・・ちょっと住職に聞いてきます」
「焼骨はどうしたんでしょうか?」
「・・・その近くのお寺に預けたとかいうような話を聞いたことがある」
「焼場に運んだ同期生と教官はだれですか?」
「・・・同期生は、一人は京都の造り酒屋のせがれで、もう一人は印刷会社の御曹司だった。二人とも早稲田で、彼は慶応よりも早稲田と馬があったようだった。教官は、たしか、手先信号の・・・」
「長瀬中尉ですか?」
堀田は立ち止まって土岐の顔を見た。〈何で知っているのか〉という目つきだった。
「・・・そう、長瀬啓志中尉だ」
土岐と堀田は地下鉄駅の入り口で別れた。別れ際に土岐は名刺を渡した。土岐はその場で、香良洲に戻ることにした。高茶屋駅に着いたとき五時を過ぎていた。駅員に火葬場の所在を聞くと、香良洲から4キロばかりのところに市営の火葬場と葬儀場があると言う。
「善導寺という浄土真宗のお寺が近くにあります」
それを聞いて、土岐は駅前からタクシーに乗った。
タクシーは深まりつつある宵闇の中を善導寺に向かった。二十分ほどで、巨大な山門の前についた。
土岐はタクシーを降りると山門をくぐり、庫裡に向かった。山門から50メートルほど奥にアルミサッシの玄関が見えた。玄関右わきのインターフォンのボタンを押すと、短髪の若い男が出てきた。上下黒のジャージーを着ている。挨拶のあと土岐は聞いた。
「戦後、このお寺に預けられたお骨があると思うんですが・・・」
若い男は、二重瞼の目を大きく見開いた。
「・・・戦後って、太平洋戦争のあとで?」
「ええ」
若い男の短髪が驚きで逆立っている。土岐は深呼吸して話を続けた。
「この近くに、海軍の飛行基地があったと思うんですが・・・」
「・・・香良洲ですか」
若い男がほっとしたように、玄関の板の間に腰をかがめて立膝になった。土岐は男を少し見下ろした。
「昭和二十年八月十五日の終戦の頃、近くの火葬場で焼いた骨をこちらに預けたらしいんですが、まだ、こちらにあるんでしょうか?」
「・・・随分と古い話で、・・・記録は取ったと思うんですが、その記録がまだあるかどうか、・・・ちょっと住職に聞いてきます」


