祭りのあと

昨夜の民家の前に着いた。辺りに高い建物がなく空が広いせいか底抜けの開放感があった。暗い空に抑圧されたような昨夜と比べると印象が全く違っていた。その民家には誰もいないようで生活のしるしがうかがえなかった。時折空っ風のように自動車が通り過ぎるだけで人通りが全くなかった。この道路に限らず、自動車に乗っていると滅多に歩行者を見かけない。たまたまマウンテンバイクに乗った少年が通りかかったので車の中から林が声をかけた。何を聞いているのか、土岐には全く分からなかった。ひと言ふた言会話を交わしただけで、赤毛の少年はお尻を浮かせて飛ぶように去って行った。
「昨夜のことを聞いてみたのですが、毎年来ているみたいですな、この時期に。ということは毎年、ホスピタリティコンベンションにあわせて、ここに集まるということなのでしょうかな」
と林が短くて太い腕組をして思案しかけたところに着信音が鳴った。林はポケットから取り出して、もどかしそうに受信ボタンを押して、
「ナンバーを書いたメモを見せて」
ところころした熊のような手を出した。土岐がポケットをまさぐってメモを出すと林はしかめ面でそれを遠目に見ながら携帯電話に聞き入っていた。電話を終えると林は内容を改めてまとめ直した。
「多くはかなり古いもので廃車扱いだそうです。西海岸と中西部で、みんなここからそれ程遠くはない。と言ってもどこも半日はかかる地域で。ただ廃車でない登録者に公立の教育関係者がいるそうです。しかも小学校からハイスクール迄で大学関係者はいないようですな。なにかのマニア関係者の集まりだったのですかな」
「永山奈津子も、あの家の住民も教育関係者ではないですよ」
「ドリムランドと初中等教育の間に何か関係があるのでしょうか」
「あります。集まったのが教育関係者であれば少女です」
「そうでしょうけど。少女なんかファストフードのお店にもいますからな。テーマパークと学校に限ったものではないでしょう」
と林に言われて土岐は黙った。暫くして、
「それから詳しいデータはメールでくれるというのであとでプリントアウトしてお渡しします。そろそろホテルに行って見ますか?」と林の方から声を掛けてきた。
「ええ。これ以上ここにいても、収穫はなさそうですから」
「そう言えば」
と林がハンドルをゆっくりと切りながら言い出した。