「6時からコンベンションのディナーパーティーでしたな。彼女はどういう予定なのですかな」
「僕、足がないもんで、英会話もおぼつかないし、一緒にいていただけますか?すいません」
と土岐は両手を膝の上に揃えて懇願した。
「そんなに恐縮しなくていいですよ。リタイアして暇をもてあましていますから。それになんとなく面白そうですな。あ、それから忘れていましたが、これは家内に頼んでおいたレンタルの携帯電話です。二日間だけ借りました。日本から持参した携帯電話はここでも使用できるのですが、国際通話扱いになるので高額になるはずです」
と言いながらコンソールから携帯電話を取り出し、土岐に手渡した。画面を見ると見慣れない記号が並んでいたが、大体の操作はボタンから想像できた。土岐が日本から持ち込んだ携帯電話は胸ポケットに入れたままだ。駐車場に着いた。車を置くと二人で直営ホテルに向かった。ようやく日が没し始めたが、まだ夜という印象がない。
「日は没したのに空は明るい」
と言うと林は日本人に幾度もそう言われたようで、
「海に障害物はないから」
とつまらなそうに答えた。ホテルの玄関迄百メートルあった。フロントに着いたときホスピタリティコンベンションのディナーパーティーは既に始まっていた。二人でホテルの受付の前に立った。土岐は置いてあったメモ用紙を一枚破り、何も書かずに畳んで、
「今日泊まる予定のMiss Natsuko Nagayamaにこのメッセージを渡してもらえないか?」
と言いながら、ブルーネットの女子事務員に渡した。白い顔中そばかすだれけの彼女は背後の壁面にある305号室の小ボックスにその紙片を入れた。土岐は林に向かってウインクした。
「彼女は305号室ですか」
と感心したように林はうなずいた。それから二人でコンベンションホールに向かった。入口に昼間置かれていた受付テーブルは撤去され両扉がストッパーで開放されていた。
「夕飯はいらないかも知れないですね」
「僕、足がないもんで、英会話もおぼつかないし、一緒にいていただけますか?すいません」
と土岐は両手を膝の上に揃えて懇願した。
「そんなに恐縮しなくていいですよ。リタイアして暇をもてあましていますから。それになんとなく面白そうですな。あ、それから忘れていましたが、これは家内に頼んでおいたレンタルの携帯電話です。二日間だけ借りました。日本から持参した携帯電話はここでも使用できるのですが、国際通話扱いになるので高額になるはずです」
と言いながらコンソールから携帯電話を取り出し、土岐に手渡した。画面を見ると見慣れない記号が並んでいたが、大体の操作はボタンから想像できた。土岐が日本から持ち込んだ携帯電話は胸ポケットに入れたままだ。駐車場に着いた。車を置くと二人で直営ホテルに向かった。ようやく日が没し始めたが、まだ夜という印象がない。
「日は没したのに空は明るい」
と言うと林は日本人に幾度もそう言われたようで、
「海に障害物はないから」
とつまらなそうに答えた。ホテルの玄関迄百メートルあった。フロントに着いたときホスピタリティコンベンションのディナーパーティーは既に始まっていた。二人でホテルの受付の前に立った。土岐は置いてあったメモ用紙を一枚破り、何も書かずに畳んで、
「今日泊まる予定のMiss Natsuko Nagayamaにこのメッセージを渡してもらえないか?」
と言いながら、ブルーネットの女子事務員に渡した。白い顔中そばかすだれけの彼女は背後の壁面にある305号室の小ボックスにその紙片を入れた。土岐は林に向かってウインクした。
「彼女は305号室ですか」
と感心したように林はうなずいた。それから二人でコンベンションホールに向かった。入口に昼間置かれていた受付テーブルは撤去され両扉がストッパーで開放されていた。
「夕飯はいらないかも知れないですね」


