祭りのあと

「6時迄大会のようです」
と土岐は言いながら助手席に滑り込んだ。薄ら寒い外気と比べると、車内は汗がにじみ出そうな程暖かかった。
「まあ、とりあえず、ランチにしますかな?腹が減っては戦にならぬと言いますから。武士は食わねど高楊枝とも言いますな」
と言いながら、林はキャデラックをだだっぴろい駐車場から発進させた。土岐には林が日本語を話すことを楽しんでいるように見えた。
 5号線沿いに北上し、左折したブルヴァード沿いの平屋建てのファミレスの駐車場に車を滑り込ませた。屋根に巨大なたまねぎをシンボルとして載せた建物以外には周囲に建造物はなかった。周辺には背丈程もある枯れて黄ばんだ雑草が雑然と生い茂っていた。
「ここのサラダバーは、いいですよ。しかも安い」
と林は車を降りながら言った。暖気と寒気の入り混じったさわやかな春風が駐車場に吹いていた。店内は五百平米程の広さだった。南を除く全方位が、大きな硝子窓になっていた。その窓に沿って、6人掛け程の広いテーブルが配置されていた。中央には百平米程のスペースに野菜やパンやスープなどが山盛りになっていた。土岐がボリュームに圧倒されるように見とれていると、いちご模様のエプロンを巻いた黒人のウエイトレスが、近寄ってきた。
「Pay first」
 土岐が薄っぺらな財布を取り出そうとすると、
「ここは安いからいいです。南條警部に貧乏学生だと聞いています」
と林は胸ポケットから皺だらけの二〇ドル紙幣をつまみ出した。
 よく食べた。ズボンのベルトをゆるめた。
「さてと、6時迄どうしましょうか。ゴルフでもやりますかな?」
と林は両手を合わせて座ったま迄、ゴルフクラブを振る動作をした。
「ゴルフはちょっと。へたなもんで」
と土岐は気の進まない表情を見せた。
「すいません。今回は遊びの資金を持ってこなかったもので」
「お金の心配をしていたのですか。いいですよ、安いものですから」と林は既に夕方迄ゴルフをする気でいた。昼食後、林のアナハイムの西にある自宅に寄り、そこから十分程の市民コースに行った。林がゴルフバッグとセーターを貸してくれた。クラブハウスで一人二十ドル程のハーフ料金を林が払い、二人でスタートホールに並んだ。
「シューズを借りますか?」