祭りのあと

「そのホスピタリティコンベンションは、どういうものですか?」
「全世界のDL関係者が、年一回、ロサンゼルスで一堂に会して、テーマパークのホスピタリティに関する提言とか、経験とか、発見とかを、二日間にわたって討議するんです」
「ああ、日本企業で言えば研修会のようなものですかね。永山さんは、その大会に毎年参加しているんですか?」
「ええ、私の知る限り永山が行っているようです」
「わかりました。どうもありがとうございました」
 搭乗すると後ろの座席に韓国人の老婆が座っていた。土岐が眠ろうと座席をうしろに倒すと罵声を浴びせられた。背中を思いっきり蹴飛ばされた。スチュワーデスが好意的で、安定飛行に入った段階で、エコノミークラスの最前列に座っていた土岐に、
「ビジネスクラスに空きがあるのでどうぞ」
と優遇してくれた。血の気の多い韓国人から離れられてほっとした。うんざりする程長い飛行だった。初めてのビジネスクラスは快適だった。映画を見たり新聞や雑誌を読んだりイヤホーンで音楽を聴いたりして居眠りしているうちに予定通りに現地時間午前十時頃にロスアンゼルス国際空港に到着した。永山奈津子の便は午前十一時に到着予定だった。林という台湾人がどこで出迎えているのか知らされていない。税関を通って出口から外に出ても出迎えに来ている人はまばらだった。それらしい人を探した。年配の男性の東洋人ということ以外、見当がつかなかった。到着ロビーで途方にくれてうろうろしていると、よれよれの長袖のTシャツにチノパンツのホームレスのような風采の上がらない東洋人が近寄ってきた。
「失礼ですが、土岐さんですか?」
 土岐が答えるとつやつやした丸顔の男は、破顔一笑して、
「はやしひろはるです」
「リンさんではないんですか?」
「まあそれは林の音読みですが、中国語読みとも少し違いますな」
「でも、流暢な日本語ですね。台湾の方ではないんですか?」
「生まれも育ちも台湾ですが外省人が来る迄は学校も家庭も日本語でした。で、これからの予定は」
と聞かれて空港内の時計を探した。
「ええと、この次の便で到着する人を尾行します」
「尾行?あなたは警察の方ですか?」
「自己紹介が遅れました。警察統計研究所でバイトしている者です」