「カネを下ろしに来たんだ」
と土岐が言うと南條の血相が変わった。
「なんでだ。なんで、現金なんだ。なんで、スイス系の銀行なんだ」
「手数料がかかるとしても舞浜で下ろした方が時間も節約できる」
「小切手を換金したんだ」
と南條があたりをつける。左ハンドルのBMWが動き始めた。
「てえことはあの銀行に口座を持っている者が振り出した小切手だ。これは厄介だ。ただでさえ顧客情報は守秘義務を盾に事情聴取ができない。ましてや外銀だから政治的圧力をちらつかせて任意情報を取ることもできない」
という南條の話を土岐は理解できなかった。
ゆったりと周囲を睥睨するように走り続けるBMWが有楽町界隈の商業地区の旅行代理店の前で再び停車した。奈津子だけがツーピースで颯爽と降りた。店内に消えた。軽自動車も三十メートル程手前で停車した。旅行代理店は全面硝子張りで目いっぱいチラシが貼ってある。近寄ればポスターの隙間から内部を全部見渡せた。こちらから良く見えるということは向こうからも丸見えということだ。おまけにBMWの車内には運転手の長田がいる。長田はウインドウを少し開け、煙草をくわえ、右手でカーライターの火をつけている。
南條は車内で自重することにした。
「あの運転手。どっかでみたことがある」
「町屋の斎場じゃ?」
「俺は行ってねえ。見たのは最近じゃねえ。多分。まあ、これ迄顔写真を何万枚と見ているから、どんな顔でも、どこかで見たような気がするというのも、当たりめえと言えば当たりめえだが」
と南條が土岐に語りかけたとき奈津子が店から無表情に出てきた。BMWが走り出した。再び尾行が始まった。都心から離れるにつれて交通量が少なくなった。葛西橋の手前でついに見失ってしまった。
「ここ迄くれば、舞浜のクリニックに戻ったということか」
と南條は一人合点し、葛西橋の手前でUターンした。そのとき、
「あのホームレスだ」
と南條が大声で叫び、ハンドルを強く叩いた。
「隅田川の?」
とあまりの大声にびっくりして土岐が聞き返した。
「そうだ。間違いない。去年の夏のあのホームレスだ。なんとなく、関西訛りがあるんで変だなとは思っていたんだ。これは一体どういうことだ。間違いなくこれはとてつもないヤマだ。記憶がどうもはっきりしないがあいつは金のバッジをつけていたような気がする」
と土岐が言うと南條の血相が変わった。
「なんでだ。なんで、現金なんだ。なんで、スイス系の銀行なんだ」
「手数料がかかるとしても舞浜で下ろした方が時間も節約できる」
「小切手を換金したんだ」
と南條があたりをつける。左ハンドルのBMWが動き始めた。
「てえことはあの銀行に口座を持っている者が振り出した小切手だ。これは厄介だ。ただでさえ顧客情報は守秘義務を盾に事情聴取ができない。ましてや外銀だから政治的圧力をちらつかせて任意情報を取ることもできない」
という南條の話を土岐は理解できなかった。
ゆったりと周囲を睥睨するように走り続けるBMWが有楽町界隈の商業地区の旅行代理店の前で再び停車した。奈津子だけがツーピースで颯爽と降りた。店内に消えた。軽自動車も三十メートル程手前で停車した。旅行代理店は全面硝子張りで目いっぱいチラシが貼ってある。近寄ればポスターの隙間から内部を全部見渡せた。こちらから良く見えるということは向こうからも丸見えということだ。おまけにBMWの車内には運転手の長田がいる。長田はウインドウを少し開け、煙草をくわえ、右手でカーライターの火をつけている。
南條は車内で自重することにした。
「あの運転手。どっかでみたことがある」
「町屋の斎場じゃ?」
「俺は行ってねえ。見たのは最近じゃねえ。多分。まあ、これ迄顔写真を何万枚と見ているから、どんな顔でも、どこかで見たような気がするというのも、当たりめえと言えば当たりめえだが」
と南條が土岐に語りかけたとき奈津子が店から無表情に出てきた。BMWが走り出した。再び尾行が始まった。都心から離れるにつれて交通量が少なくなった。葛西橋の手前でついに見失ってしまった。
「ここ迄くれば、舞浜のクリニックに戻ったということか」
と南條は一人合点し、葛西橋の手前でUターンした。そのとき、
「あのホームレスだ」
と南條が大声で叫び、ハンドルを強く叩いた。
「隅田川の?」
とあまりの大声にびっくりして土岐が聞き返した。
「そうだ。間違いない。去年の夏のあのホームレスだ。なんとなく、関西訛りがあるんで変だなとは思っていたんだ。これは一体どういうことだ。間違いなくこれはとてつもないヤマだ。記憶がどうもはっきりしないがあいつは金のバッジをつけていたような気がする」


