祭りのあと

と南條に言われて良く見ると確かにそうだった。そのときシャッターのひとつが巻き上げられて土岐の見覚えのあるBMWが出てきた。出てきてから一旦停止し助手席の窓から奈津子がリモコンをシャッターに向けた。シャッターが巻き戻って閉まり始めるとBMWはすべるように加速して走り出した。赤い軽自動車には気づいていない。土岐は登録ナンバーを確認した。3411だった。土岐は叫んだ。「スカイラインと同じ。縁起のいい番号なんですかね」
「最初の場札がサンタで、もういっちょ来いでヨツヤを引いて、シチケンだ。シチケン引きなしで、ここで普通は札止めだが、相手がそれ以上と分かっていれば、勝負とばかり、もういっちょ来いで、インケツを引いて、これでオイチョだ。これ以上札は引けないから、相手がカブなら負けだ。負けたところで悔しまぎれに未練がましく山から一枚札を引いたら、またインケツでカブになった」
「なんですかそれ?」
と土岐には南條が不意に陰陽師の呪文を唱え始めたように聞こえた。
「オイチョカブだ。3411を合計するとカブになる」
「カブって9のことですか。3411ってそういう意味なのかなあ」
と話しかけたが南條は聞いていない。アクセルをふかすことに夢中だった。南條は急いでアクセルをふかし続けた。車は息切れするだけだ。BMWはあざ笑うかのように遠ざかるばかりだった。
「見失うんじゃないですか?せっかくナンバーを確認したのに」
「なんとかなる。どのみち橋につかまるから」
「みろ。あの橋を渡る道に左折するところで止まってるだろう?」と南條は数百メートル先に左折のウインカーを出してBMWの停車していることを指摘した。土岐は目を凝らしてようやく確認することができた。軽自動車は車体をきしませながらエンジン全開で追尾した。追いつく前に、BMWは逃げるように悠然と左折し始めた。信号が青のうちに軽自動車は左折できそうになかった。案の定、南條の軽自動車は次の赤信号につかまった。土岐は嘆いた。南條は土岐の肩を押して、叫んだ。
「どっちに行くか、見てこい」
 土岐は押し出されるように外に出された。寒気に縮み上がった。走りながら大通りを左折しBMWの後姿を目で追いかけた。息が白い。背伸びをすると特徴のあるテールが確認できた。橋を渡りきったところで、少し湾曲している道路の向こうにすぐに消えて行った。
「乗れ。どっちだ」