という南條の言葉で土岐は口をつぐんだ。車が走り出すとゴーカート程ではないが目線が低く、走行しているという臨場感があった。
「永山奈津子はBMWを使ってないんです。彼女の通勤車はシルバーのスカイラインGTで」
「じゃ運転していた男は自分の車に乗っていた?」
「そうです」
車は路面の凹凸を座席に伝える。錦糸町方面に南下し始めた。
「大体勤務地が千葉で、なにわナンバーということはないだろう。BMWは最近こっちに誰かが乗ってきたもんだろう。その誰かってえのはお前さんの言う運転手かもしれねえ。それにしてもその運転手が平野敬子の町屋の葬儀で受付に座っていたというのは確かか」
「ええ、ビデオ・アイ子がそう言ってました」
「びでおあいこ?誰だそれ」
「能美亜衣子のニックネームです。彼女、見た映像の記憶力が超人的で、再生可能だと自慢しているんです。その彼女が町屋の斎場で受付の男を見ているんです。あれだけじっと見ていれば記憶できても不思議ではないと思いますが。僕は人見知りだから彼女みたいにアカの他人をじっとみつめることはできないですね。先週BMWに乗ったとき後部座席から運転手の顔をバックミラー越しに携帯で隠し撮りした写真を彼女に例のバッジと一緒に転送したんです。そしたら男もバッジも町屋の斎場で見たって」
「それはお前からのメールで見たが、本当かいな?にわかには信じがたいな。思い込みじゃないのか?チラッと見ただけだろう?」
「でも彼女は自信たっぷりに間違いないって言ってました」
「証言の確かさってえのは裁判官が判断するんだ。たった一度ちらっと見ただけの男と、映りの悪い携帯写真の男が同一人物だという証言を裁判官が採用するかどうかの問題だ」
「でも、彼女が嘘をついているとは思えないなあ」
「お前の気をひこうとしているのかも知れねえぞ」
「まさか」
「男と女はまさかばかりだ。それで男女は成り立っている」
「葬儀の受付にいた男については遺族も町会長も知らないと言っています。もっともみんなが本当のことを言っていればの話しだけど」と言う結論めいた土岐の一言で南條は黙った。しばらくして、
「永山奈津子はBMWを使ってないんです。彼女の通勤車はシルバーのスカイラインGTで」
「じゃ運転していた男は自分の車に乗っていた?」
「そうです」
車は路面の凹凸を座席に伝える。錦糸町方面に南下し始めた。
「大体勤務地が千葉で、なにわナンバーということはないだろう。BMWは最近こっちに誰かが乗ってきたもんだろう。その誰かってえのはお前さんの言う運転手かもしれねえ。それにしてもその運転手が平野敬子の町屋の葬儀で受付に座っていたというのは確かか」
「ええ、ビデオ・アイ子がそう言ってました」
「びでおあいこ?誰だそれ」
「能美亜衣子のニックネームです。彼女、見た映像の記憶力が超人的で、再生可能だと自慢しているんです。その彼女が町屋の斎場で受付の男を見ているんです。あれだけじっと見ていれば記憶できても不思議ではないと思いますが。僕は人見知りだから彼女みたいにアカの他人をじっとみつめることはできないですね。先週BMWに乗ったとき後部座席から運転手の顔をバックミラー越しに携帯で隠し撮りした写真を彼女に例のバッジと一緒に転送したんです。そしたら男もバッジも町屋の斎場で見たって」
「それはお前からのメールで見たが、本当かいな?にわかには信じがたいな。思い込みじゃないのか?チラッと見ただけだろう?」
「でも彼女は自信たっぷりに間違いないって言ってました」
「証言の確かさってえのは裁判官が判断するんだ。たった一度ちらっと見ただけの男と、映りの悪い携帯写真の男が同一人物だという証言を裁判官が採用するかどうかの問題だ」
「でも、彼女が嘘をついているとは思えないなあ」
「お前の気をひこうとしているのかも知れねえぞ」
「まさか」
「男と女はまさかばかりだ。それで男女は成り立っている」
「葬儀の受付にいた男については遺族も町会長も知らないと言っています。もっともみんなが本当のことを言っていればの話しだけど」と言う結論めいた土岐の一言で南條は黙った。しばらくして、


