「簡単な数値例で言うと、例えば、未成年人口千人あたりの全国の各都道府県の事故死者数は大体十人だとしよう。このレベルではどこも大体同じだ。しかし、人口が多いから、絶対数では、大都市の交通事故の死者数は、圧倒的に多いものの、未成年人口千人あたりだと6人。これに対して、その他の道府県は7人で、ひとり多い。その理由は、さっき能美さんが言った通りだと思う。問題は、交通事故死をのぞく残りのその他の事故死が、大都市で4人で、その他の道府県で3人と、大都市の方が若干多いということだ」
 初めて二人は正面から目を合わせた。
「ということは死者の絶対数は交通事故と比べればそれ程大きくないが他の死因では大都市圏は他の地域よりも多少高率だということだ。この数値例だと大都市が四〇%に対してその他道府県は三〇%」
「当たり前じゃない?」
と亜衣子は軽く口を尖らせて腕組みをした。土岐は、その他の死因別の棒グラフを作った。率でソートして、棒グラフを叩き出して、思わず絶句した。
 亜衣子も腰を少し浮かせて、ディスプレイの棒グラフをのぞき込んだ。棒グラフの一番目のタイトルは、自殺となっていた。
「なにがエーッなの?」
と亜衣子が土岐にいぶかしげに聞いた。
「東京、千葉、大阪、和歌山、兵庫、京都、奈良がごく僅かだけど平均を上回っている。この七つの都府県以外は大体それ以下なのに」
「ほんの少しじゃない。誤差の範囲内でしょ。それに平均が1だから、どこかの県が1を下回れば、どこかの都道府県が1を上回る。それよりさっきの未成年者の交通事故死の男女別を見て」
と亜衣子に言われるままに土岐は先刻ファイル保存しておいた全体の棒グラフを男女別に分けてみた。男女を比較するため都道府県別に男子は青色、女子は赤色をつけた棒グラフを並べてみた。
 亜衣子は我が意を得たりとばかりに誇らしげに説明を始めた。