「たやすいことだ。それはそれとして例のねえちゃんはどうしたの。ああいうのを小股の切れ上がったいい女っていうんだよ。昔は向島や柳橋あたりに結構いたもんだが。最近はしょんべん芸者ばかりで」
おまかせの料理を食べつくした頃店内がサラリーマンと地元の連中でごった返してきた。潮時と見て南條が老婆におあいそを促した。土岐は店の外に出た。悪寒の走る乾燥しきった夜気が土岐を包んだ。
「これは間違いなく事件だ。最後のヤマにしたい。俺の刑事生活三十有余年の総決算だ。もう先がねえんだから多少のルール違反はあえておかす。お前もそのつもりでやってくれ。カラ出張で溜め込んだ裏金を使いまくるぞ。何せお前は本庁の警視正の紹介だからな」
と言う南條の声を背中で聞いて帰路についた。
8 赤い軽の追尾
翌日の土曜の早朝、土岐の携帯電話にメールの着信音が鳴った。枕元の携帯電話を開けて見ると南條からだった。件名に@バッジ@とだけあった。添付ファイルに写真があった。写真を開くとバッジが映っていた。まさしく、黒地に金文字はメソポタミア文字だった。もう一枚はその裏の写真で中央部分が抉れたように欠けていた。土岐はそのバッジの写真と長田の盗撮写真を添付して亜衣子のパソコンのメールアドレスに転送することにした。
日曜日の夕方、亜衣子から携帯電話に着信があった。
「パソコンで拡大してみたけど画素が少ないんで、不鮮明だったわ」
「ごめん、僕の携帯電話、安売りで買ったもんだから」
「でも、私のビデオ・アイには十分な映像だったわ。写真の男はたしか、町屋の斎場の受付にいたわ。しかも、襟穴にバッジをつけて」
「町屋の平野敬子の葬儀会場の受付にいたの!すごーい!」
「だから、ビデオ・アイ子と呼ばれているって言ったでしょ」
「でも、そのとき本当にあのバッジをつけていたの?」
「まちがいない。ピカピカしていた。模様迄は確認できなかったけど。葬式に光物はいけないのよ。宝飾は真珠に決まっているでしょ」
「僕は早々に立ち去ったけど、そういえばじろじろ見てたね」
「ビデオ・アイはじろじろ見るのがこつよ」
「でも何で運転手が、平野敬子の葬儀会場の受付にいたんだろう?」
「運転手ってなに?」
「話すと長くなるんで月曜日に説明するよ」
と土岐は携帯電話を切った。南條にメールでこの事実を伝えた。
おまかせの料理を食べつくした頃店内がサラリーマンと地元の連中でごった返してきた。潮時と見て南條が老婆におあいそを促した。土岐は店の外に出た。悪寒の走る乾燥しきった夜気が土岐を包んだ。
「これは間違いなく事件だ。最後のヤマにしたい。俺の刑事生活三十有余年の総決算だ。もう先がねえんだから多少のルール違反はあえておかす。お前もそのつもりでやってくれ。カラ出張で溜め込んだ裏金を使いまくるぞ。何せお前は本庁の警視正の紹介だからな」
と言う南條の声を背中で聞いて帰路についた。
8 赤い軽の追尾
翌日の土曜の早朝、土岐の携帯電話にメールの着信音が鳴った。枕元の携帯電話を開けて見ると南條からだった。件名に@バッジ@とだけあった。添付ファイルに写真があった。写真を開くとバッジが映っていた。まさしく、黒地に金文字はメソポタミア文字だった。もう一枚はその裏の写真で中央部分が抉れたように欠けていた。土岐はそのバッジの写真と長田の盗撮写真を添付して亜衣子のパソコンのメールアドレスに転送することにした。
日曜日の夕方、亜衣子から携帯電話に着信があった。
「パソコンで拡大してみたけど画素が少ないんで、不鮮明だったわ」
「ごめん、僕の携帯電話、安売りで買ったもんだから」
「でも、私のビデオ・アイには十分な映像だったわ。写真の男はたしか、町屋の斎場の受付にいたわ。しかも、襟穴にバッジをつけて」
「町屋の平野敬子の葬儀会場の受付にいたの!すごーい!」
「だから、ビデオ・アイ子と呼ばれているって言ったでしょ」
「でも、そのとき本当にあのバッジをつけていたの?」
「まちがいない。ピカピカしていた。模様迄は確認できなかったけど。葬式に光物はいけないのよ。宝飾は真珠に決まっているでしょ」
「僕は早々に立ち去ったけど、そういえばじろじろ見てたね」
「ビデオ・アイはじろじろ見るのがこつよ」
「でも何で運転手が、平野敬子の葬儀会場の受付にいたんだろう?」
「運転手ってなに?」
「話すと長くなるんで月曜日に説明するよ」
と土岐は携帯電話を切った。南條にメールでこの事実を伝えた。


