「俺は警部補であることを誇りにしてる。警部昇格への昇任試験を拒否し、内勤を希望せず、試験勉強もせず、上司に媚びへつらわず、出世のための仕事はこれっぽっちもしてこなかったというノンキャリの勲章なんだから。訓告、懲戒、厳重注意、減俸処分、数知れず。現場を何にも知らない青っちょろいキャリアはいきなり警部補だ。馬鹿らしくて警部補だってなるつもりはなかった。上司に『下がつっかえているから昇任試験を受けてくれ』と懇願されて人助けで嫌々なったようなもんだ。生涯一警察官で良かったんだ。人を管理するなんておこがましい。人間はみんなフラットだ。上も下もねえ」
「今の話は、考古学の」
と主人はなだめるように聞きなおした。
「俺がそんな酔狂に見えるか?」
「店名の安禄山、ちょうちんに書いてあるでしょ。楊貴妃とのからみで誰に聞いても中国人だと言うのが百パーセントで」
「中国人じゃない?」
と土岐が目を丸くして素っ頓狂な声をあげた。
「トルコ系なんすよ」
と主人が嬉しそうに揉み手をしながら言う。
「センター試験で世界史受けなくて正解」
「なこたあどうでもいい。要は運転手の素性だ」
南條の剣幕で主人はカウンターの奥に戻って行った。
「僕が調べてみましょうか。年間パスポートももらったことだし」と土岐が小さな封筒の中から年間パスポートを取り出す。南條はそれを手にとってしげしげとながめた。
「お前さんにお願いできれば何の問題もないんだが。こちとら他の事案の整理で手一杯だ」
「南條さんの言われるとおりにすれば問題はないんでは?」
「そうもいかない。民間人にまかせてドジを踏んだら、マスコミにいいように叩かれる。民間人を利用するのは俺の主義に反する」
「じゃこうしません?僕は僕の方の調査で運転手の素性を勝手に調べます。だから墨田署とは無関係。そこで警部補の方からアドバイスをもらえません?その見返りとして何か分かったら連絡します」
「あんまり気は進まないが人手もないし予算もないし。しかしこれはあく迄も非公式だ。だからお前にお願いするとは絶対に言わねえ。邪魔もして欲しくねえから何をするか必ず事前に言ってくれ」
「結構ですよ。でもこちらからもお願いが。例の証拠のバッジのデジカメ写真をメールで送信してもらえないですか?」
「今の話は、考古学の」
と主人はなだめるように聞きなおした。
「俺がそんな酔狂に見えるか?」
「店名の安禄山、ちょうちんに書いてあるでしょ。楊貴妃とのからみで誰に聞いても中国人だと言うのが百パーセントで」
「中国人じゃない?」
と土岐が目を丸くして素っ頓狂な声をあげた。
「トルコ系なんすよ」
と主人が嬉しそうに揉み手をしながら言う。
「センター試験で世界史受けなくて正解」
「なこたあどうでもいい。要は運転手の素性だ」
南條の剣幕で主人はカウンターの奥に戻って行った。
「僕が調べてみましょうか。年間パスポートももらったことだし」と土岐が小さな封筒の中から年間パスポートを取り出す。南條はそれを手にとってしげしげとながめた。
「お前さんにお願いできれば何の問題もないんだが。こちとら他の事案の整理で手一杯だ」
「南條さんの言われるとおりにすれば問題はないんでは?」
「そうもいかない。民間人にまかせてドジを踏んだら、マスコミにいいように叩かれる。民間人を利用するのは俺の主義に反する」
「じゃこうしません?僕は僕の方の調査で運転手の素性を勝手に調べます。だから墨田署とは無関係。そこで警部補の方からアドバイスをもらえません?その見返りとして何か分かったら連絡します」
「あんまり気は進まないが人手もないし予算もないし。しかしこれはあく迄も非公式だ。だからお前にお願いするとは絶対に言わねえ。邪魔もして欲しくねえから何をするか必ず事前に言ってくれ」
「結構ですよ。でもこちらからもお願いが。例の証拠のバッジのデジカメ写真をメールで送信してもらえないですか?」


