祭りのあと

「すんません。盗撮したもんで。すぐに、転送します」
「そいつに連絡取れるか?」
 土岐は財布から永山奈津子の名刺を出した。
「なんだ、女の運転手か?おかまみたいなとんでもない女だな」
「いえ彼女がCDLの渉外係なんです」
「じゃその運転手は渉外部つきの運転手ということか?」
「さあ?彼女は遠い親戚だとか言ってましたが」
「しっかりせい。お前らの仮説が正しいとしたら、これは大ヤマなんだぞ。この名刺もらっとくぞ」
と南條は名刺を手帳に挟み込んだ。
「東京に着く迄バッジのことはからっきし気がつかなかったもんで。現物を見てないもんで、同じものかどうか確信も持てないし」
「まあ、お前を責めてもしょうがない。まず身辺調査を先にやってからでないと逃げられるかも知れんな。さて、どうすっか?」
と南條は毛むくじゃらの腕を組み始めた。そこにお通しが二つ出てきた。金曜日の夜にもかかわらず、時間のまだ早いせいか二人の他に客はまだ来ていなかった。土岐が思い出したように南條に聞いた。
「でも、バッジのことを敬子の母親に聞いてましたよね。一緒に敬子の家に行った日に。なんで、聞いたんですか?」
「勘だ。聞いた瞬間、母親の瞳孔がピッと動いた。見覚えがある」「へーっ、そんなこと分かるんですか。気がつかなかったなあ」
「職務質問を十年もやってれば、目の動きで嘘か本当かすぐわかる。嘘発見器なんぞ必要ねえ。お前は能美亜衣子が好きだろう」
と南條に言われて土岐は返答につまった。会話が途切れたところで、主人が自家製のなま湯葉を自ら持ってカウンターの外に出てきた。
「毎度、警部。さっきからペルシャがどうの、メソポタミアがどうのって、耳にはいちゃいましたが、考古学の話題ですけえ?」
「警部じゃねえの、警部補」
「警部でいいじゃないですか。もうすぐ定年なんでしょ」