祭りのあと

と奈津子が少し首を前に出して潤んだような瞳で聞いてくる。
 土岐はその瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えた。
「警察庁のデータからです。誰がやっても同じ結果だと思いますが」
「それで、理由が解明される可能性はあるんですか?」
と奈津子は豊かな胸の前で白く細い指を組んだ。
「いまのところ、全く」
「深野さんのお話だと女の子の事故死とCDLの間に因果関係があるという話し振りで、今伺ったお話とは随分印象が違うようですね」
「あれはテレビの編集のせいで。僕が書いたのは、因果関係があるかも知れないという程度で」
「これはお願いですが単なる偶然という結論を記者会見か何かで発表していただけないでしょうか。私どもは株式を公開しておりまして、株主様も十万人以上おりまして実際株価も下落しておりまして、ストップ安という程ではないのですが、株主様からの苦情の電話がIR室の方に絶えないとの連絡を受けています。株式の時価評価損は数億円との試算もあります。この調子で営業利益が落ち込むと、株主様に対して責任を取らなければならないし、場合によっては株主様の手前、そちらさまを風評被害で民事の損害賠償で訴えなければならなくなるかもしれません。警察庁と争うのが目的ではなくて、経営陣として株主様に対して責任を取るという意味で」
と奈津子は凛とした目で土岐を射抜いた。
「その辺はアルバイト風情には。僕にいうよりも責任者の深野課長と談判したらどうでしょうか」
「そこが悩ましいところで。こちらといたしましてはことを大きくしたくはないんです。マスコミの絶好の餌食にされてしまうでしょ。かといって株主様に対してしかるべき方策を採らないと株主代表訴訟を起こされて、かえってことが大ごとになってしまうかも」
「それではどうにすればいいのでしょうか」
「さき程も申し上げましたように単なる偶然の数値であってCDLと女の子の自殺とは因果関係は全くないと公表していただければ」 
 奈津子の長い睫毛に土岐は吸い寄せられるように見とれた。ただ見ていることに満ち足りた至福を感じていた。
「偶然なのかどうか、今現在調査しているところです」
「わかりました。結果はいつごろ出される予定なんですか?」
「あと一二週間程で次の調査報告書をまとめなければならないことになっています。最終的には今月末になるんじゃないかと思います」