という女に先導されて土岐はファミレスに入った。運転手も遅れて入ってきた。二人の席の隣の厨房の出入口の近くに席を取った。背を向けて座っていた。二人の会話を聞き取れる距離だった。土岐が中央付近のボックス席にこげ茶のダッフルコートのまま着くと奈津子は椅子に浅く腰掛けてCDLのロゴのある名刺をさし出した。
「あらためまして。永山奈津子と言います。渉外を担当しています。クレーム処理や迷子が専門なんですが、今日は逆にクレームを申し入れるような感じです」
と念を押すように語尾をはっきり発音する。
「アルバイトなもんで名刺がありません」
「本業はなんですか?」
と奈津子は潤いに満ちた瞳で真面目に聞いてくる。
「オーバードクターなんです。オフィシャルな肩書きは研究生です」
「今回の調査の実質的な責任者ですよね」
「作業は僕ですが全責任は深野課長がとることになっています」
「テレビに出演された方ですね。でもあなたの方がイケ面でテレビ映りはいいんじゃないですか?」
「所詮僕は裏方ですから」
「ごめんなさい、気がつかなくって。お飲み物はなにになさいます」
と土岐の目をのぞき込むようにして言う。ほんの少し上目使いだ。
ウエイトレスが気だるそうにオーダーを取りにやってきた。奈津子はアメリカンコーヒーを二つ注文した。
「あのテレビ出演のあと、入場客がかなり減りました。私どものテーマパークは未成年の女の子もターゲットにしているので、ああいう、報道がされるとダメージが大きいんです。風評被害と言うのでしょうか。一体どういう根拠で深野さんがテレビでおっしゃられたのか、簡単に説明していただけますか?」
と言う奈津子の口調は、内容は詰問だが、抑制されていておだやかだった。アナウンサーのようなしゃべり方だ。地声をコントロールしている。土岐は奈津子の整った面差しと白い象牙のような艶やかな肌に見とれた。涼やかな声に聞きほれていた。
「統計的な確率の問題で真実は闇の中なんです」
「と、おっしゃいますと?」
と奈津子は少し首を傾ける。
「CDLへ行ったかも知れない未成年女子の原因不明の自殺率が東京都と千葉県で他の県よりも若干高いということなんです。ほんの僅かなんですけども、なぜそうなのか、理由はわかりません。単なる偶然かもしれません。いま現在、鋭意調べているところです」
「どうして、そういうことが分ったんですか?」
「あらためまして。永山奈津子と言います。渉外を担当しています。クレーム処理や迷子が専門なんですが、今日は逆にクレームを申し入れるような感じです」
と念を押すように語尾をはっきり発音する。
「アルバイトなもんで名刺がありません」
「本業はなんですか?」
と奈津子は潤いに満ちた瞳で真面目に聞いてくる。
「オーバードクターなんです。オフィシャルな肩書きは研究生です」
「今回の調査の実質的な責任者ですよね」
「作業は僕ですが全責任は深野課長がとることになっています」
「テレビに出演された方ですね。でもあなたの方がイケ面でテレビ映りはいいんじゃないですか?」
「所詮僕は裏方ですから」
「ごめんなさい、気がつかなくって。お飲み物はなにになさいます」
と土岐の目をのぞき込むようにして言う。ほんの少し上目使いだ。
ウエイトレスが気だるそうにオーダーを取りにやってきた。奈津子はアメリカンコーヒーを二つ注文した。
「あのテレビ出演のあと、入場客がかなり減りました。私どものテーマパークは未成年の女の子もターゲットにしているので、ああいう、報道がされるとダメージが大きいんです。風評被害と言うのでしょうか。一体どういう根拠で深野さんがテレビでおっしゃられたのか、簡単に説明していただけますか?」
と言う奈津子の口調は、内容は詰問だが、抑制されていておだやかだった。アナウンサーのようなしゃべり方だ。地声をコントロールしている。土岐は奈津子の整った面差しと白い象牙のような艶やかな肌に見とれた。涼やかな声に聞きほれていた。
「統計的な確率の問題で真実は闇の中なんです」
「と、おっしゃいますと?」
と奈津子は少し首を傾ける。
「CDLへ行ったかも知れない未成年女子の原因不明の自殺率が東京都と千葉県で他の県よりも若干高いということなんです。ほんの僅かなんですけども、なぜそうなのか、理由はわかりません。単なる偶然かもしれません。いま現在、鋭意調べているところです」
「どうして、そういうことが分ったんですか?」


