祭りのあと

 二月に入った。CDLやWSJの開園後、未成年女子の事故死や原因不明の自殺がその周辺の都府県で確率的に多い理由は分からなかった。テーマパークと未成年女子の事故死の間に因果関係があるのかどうかも疑わしくなった。分からないまま、土岐と亜衣子は取り掛かってから三週間たらずで調査報告書の草稿をとりまとめた。深野はその事実だけを明確に記述し、調査が継続に値することを明記して総務省に提出した。その結果、深野の思惑通り異例の迅速さで調査継続の追加予算がついた。しかも総務省がプレスリリースしたことから、この調査が深野の期待通りマスコミに取り上げられた。最初は深野のコメントと顔写真入りで週刊誌上で見開きの記事になった。週刊誌のインタビューでは深野はテーマパークの開園と未成年女子の事故死がその周辺の都府県でほんの僅か多いことを事実に基づいて説明した。記事ではそれが歪曲され両者の間にさも因果関係があるかのような報道がセンセーショナルになされた。しかし歪曲のおかげでその記事がテレビのワイドショーで紹介され、さらに特番が組まれて深野はテレビ出演することになった。深野にとって夢のようなテレビ出演はたったの三分間ではあったが、出演前に三時間も有名タレントと一緒にテレビ局のスタジオに同席できたことは望外の喜びだった。暗い背景から自分を飲み込もうとするかのようなテレビカメラに向かって三分間話した後、日陰の花でも一生に一度は咲くことはあるという思いがした。テレビ報道でも未成年女子の事故死とテーマパークの因果関係は既成事実とされ、その情報の解説が深野に求められた。深野は他のテレビ局でも求められた通りに説明したがビデオを巧妙に編集して放映されたものを見ると深野が科学者として客観的事実を述べた部分はカットされ結論だけが流された。その結論が導かれるための前提が全て省略された結果、視聴者の目には未成年女子がテーマパークに行くと事故死するというイメージだけが残った。TⅤディレクターの思惑通り、視聴者を釘付けにし、チャンネルをそのままにさせるようなインパクトの強い画面構成とはなった。調査報告書の内容からは乖離していた。テレビ出演した直後、統計研究所に何本かの問い合わせの電話があったが、視聴者からと思われるクレームの電話はなかった。